マツコ・デラックスの「自分がまともな人代表?」発言に感じた冷静な自己分析力と健康不安説への憂慮

スポーツ報知
最近放送の番組で、たびたび食事量の減少と体調不安を明かしているマツコ・デラックス

 テレビ界のモンスターの明晰過ぎる自己分析に「やはり、この人は自分のことが分かっている」―。心底、そう感じさせられた一幕だった。

 3日に放送された日本テレビ系「マツコ会議」(土曜・午後11時)。タレント・マツコ・デラックス(50)が総合演出としてスタッフを集め、企画会議。今、ディープな場所や人を深掘りする番組のこの日のゲストはデビュー42年、とっくにベテランの域に達したタレント・中山秀征(55)だった。

 13年目に入った日本テレビ系「シューイチ」(日曜・午前7時半)など30年間途切れることなく生放送のMCを務め続けている中山に現在、民放各局に6本のレギュラー番組を持つマツコが本音を漏らしたのは、番組中盤だった。

 芸能界の裏も表も知り尽くした中山が「司会者になりたいと思ったことはない」と意外な一言を漏らすと、この言葉を受けたマツコがこう、つぶやいた。

 「意外と望んでるものじゃないのかも。私もそうだったから」―。

 「こんなに自分がいい人って言ったら変だけど、それこそ常識的なまともな人代表のように扱われることになるなんて、ちっとも思ってなくて」と続けると、我に返ったように「だって、こんなよ!」と自分を指して叫んだ。

 「自分が予定していたこととは全く違うことを今やっているから、そんなものなのかもね」ともしみじみ話したマツコ。自身が女装家であり、マイノリティーであることを自覚しているからこそ口をつく言葉。

 「だって、こんなよ!」という言葉は決して自己卑下ではなく、その裏側には「私がオピニオンリーダー的に扱われていいのか?」という冷静な自己評価があると、私は感じた。

 そんな大物タレントの魅力の一端に直接触れることができたのが、今から5年前のテレビ東京・天王洲スタジオでの収録現場だった。

 2018年5月、マツコが同局の特別番組5つに立て続けに出演する「無理矢理、マツコ。テレ東に無理矢理やらされちゃったのよ~」プロジェクトを進めていた。私はその第1弾となるクイズ形式の番組「マツコがマネーをあげたいクイズ」の収録に潜入取材していた。

 当時も月曜の「月曜から夜ふかし」から土曜日の「マツコ会議」まで民放キー局の番組プラス「5時に夢中!」の計8番組にレギュラー出演と、見ない曜日がない“日替わりマツコ”状態だった超売れっ子は、テレ東の同番組出演で民放キー局を完全制覇したのだった。

 約5時間に及んだ収録後の会見。180センチ、140キロの巨体(当時)を黒のロングドレスに包んだマツコはロングラン収録の疲れも見せず、「ユルいのじゃなく、激しめな質問ちょうだい!」とシャウト。「こっちから行くから!」と自らマイクを持って質問した記者に突進するサービス精神を見せつけた。

 その場で漏らした「(番組収録での)1回の出会いというのを大事にしたかったんですよ。いつか、私は誰かに刺されるの。1個の番組を作り上げるのに、ああでもない、こうでもないと、スタッフとケンカしながら作り上げているわけですから…。人任せでやれないタイプなのね」という言葉に記者魂がうずいた。だから、どうしても聞きたくなった。

 「画面で見ない日はない“日替わりマツコ”状態だが、体が保つのか?」―。 そう聞こうとした頭の中には、現在のマツコ同様、鋭いテレビ批評で時代の寵児となったものの02年、39歳で虚血性心不全のため急死した消しゴム版画家でコラムニストのナンシー関さんの存在があった。

 マツコ同様、巨体で有名だったナンシーさんも時代に消費され、過剰な仕事ぶりで命をすり減らした―。ナンシーさんの愛読者だった私は勝手にそう思っている。

 もともとは編集者だったマツコも、横田増生さんの著書「評伝ナンシー関」の帯に「アタシ、こんなにも命をすりへらして仕事できないな」と、共感を覚える文章を寄せていた。

 だからこそ、「ハードスケジュールの中、体調面は大丈夫なのか?」と、どうしても聞きたかった。

 しかし、相手は1枚も2枚も上手だった。「報知の中村です」と名乗ったとたん、「報知新聞はダメです~」とピシャリ。ニヤリと笑った後、「じゃあ、いいわよ。聞いても」と言われたので真剣に質問すると、「そこで、今年のジャイアンツはどうですか?って聞くのよ。報知なのに、なんで分からないのよ」とイジられた後、「そういう仕事じゃないよね、ごめんね」と一言。

 やっと、「私、テレビ以外の仕事してないから。結構、そんなにハードじゃないよ。ほら、グラビアの女の事務所とかだとイベントとかいっぱいやらなきゃいけないけど、ウチは地味~な会社なんで。テレビの仕事だけやってるだけだから。そんなにハードじゃないのよ」。結局、こちらの聞きたかったことを、ちゃんと答えてくれた。

 図に乗って、「今日の収録を見ると、ものすごいテンションで現場を盛り上げているから疲れないのかなと思って」と、さらに聞くと、「バカにしてんの?」と周囲を爆笑させた後、「やっぱり、報知って、こういうやり口なの? 私が原(辰徳)監督の親戚だったら、こんな扱いじゃないのか?」と一同爆笑のコメント。こちらの社名をイジって場を盛り上げてくれた。

 それでも、最後には「ありがとう、ありがとう」と頭を下げる人に対する丁寧さを見せたマツコの一見の記者に見せた優しさを伝えたくて5年前のやり取りを再現して見たが、どうだろう。そこには、今につながる冷静な自己分析と周囲への的確な観察眼が、そのまま現れていないだろうか。

 あれから5年が経った。

 今、マツコはかなりの頻度で食事量の減少や体調の変化を出演した番組で明かし続けている。

 5日放送の日本テレビ系「月曜から夜ふかし」(月曜・後10時)では、「関ジャニ∞」の村上信五(41)と登場するやいなや「ゴホゴホッ」と咳き込み、「ごめん、誤嚥(ごえん)。ゴホゴホゴホッ…」と苦しそうな表情を見せ、「もうだめ、油断すると。こうやって死ぬってメカニズムが分かってきたの」と手で口を覆う場面があった。

 村上に「消化器系が衰えてきたんちゃうん?」と聞かれると、「こんな体だから分かりづらいんだけど、最近、食が細い」と告白。「ただ、全然、痩せたりはしないのよ、もう。でも、本当に食べられなくなってきた」と続けた。

 村上が「ちょっと待って。それ初めて聞いたわ」と心配すると「50(歳)だからね! モリモリ食う50(歳)、あんま、いねえだろ!」と、あくまでジョークでかわした。

 5月26日放送のテレビ朝日系「マツコ&有吉かりそめ天国」(金曜・後8時)では「無限に食べていられると思うものはありますか?」というテーマで有吉弘行(49)とトークを展開した際、「本当さ。最近、悔しいんだけど、食べれなくなってきて」とポツリ。

 「(ご飯)3合とかいけてた時が遠い昔だね。ご飯だけだったら、まだ、3合いけると思うのよ」と続け、有吉に「ご飯だけで3合行くバカいないよな」とツッコまれた後、「おかずが入っちゃうと3合無理。食えなくなるって、生命力の根源が侵されてくる感じね」と正直に明かしていた。

 度重なる本人の発言の中、マツコと親交の深いタレント・ミッツ・マングローブ(48)が6月2日放送のTOKYO MX「5時に夢中!」(月~金曜・後5時)で「(マツコは)あんな不摂生な生活をしていて、医者に行くと、血液がサラサラなんです」と明かした時には心底、ホッとした。

 05年に「5時に夢中!」のコメンテーターとして初登場して以来、一気にテレビ界の寵児(ちょうじ)となり、18年以上突っ走り続けてきたマツコに“勤続疲労”が出てきても当たり前だと、私は思う。

 一記者が言うことではないのは重々承知の上で言う。万が一、体調不安があるなら、休み休み仕事をしてほしいし、それが許される立場に、既にマツコはあると思う。

 誰もが愛する稀代のトリックスターを、決してハードスケジュールと疲弊なんかですりつぶしてはならない。僭越(せんえつ)ながら、私はそう思う。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆マツコ・デラックスの現在のレギュラー番組と出演開始年

 ▽日本テレビ

 「月曜から夜ふかし」(月曜・午後10時、2012年~)

 「マツコ会議」(土曜・午後11時、2015年 ~)

 ▽テレビ朝日

 「マツコ&有吉 かりそめ天国」(金曜・午後8時、2017年~)

 ▽TBS

 「マツコの知らない世界」(火曜・午後8時57分、2011年~)

 「週刊さんまとマツコ」(日曜・午後1時半、2021年~)

 ▽TOKYO MX

 「5時に夢中!」(月~金曜・午後5時、2005年~)※月曜コメンテーター

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