報道に携わる上で大切なのは、目撃した一瞬の感動を逃さないこと。輝きや挫折、その舞台裏。時に批判も発信する。「ニュース」という言葉を使うくらいだから、基本的に新しいものが好まれる。だが、もう一つ重要な役目がある。歴史をつなぐこと。個人的には後者の方が好きだ。
誰々以来、何年ぶりの快挙。しばしば使う表現は目の前の出来事のすごさを表す方法であると同時に、過去を掘り起こす作業になる。担当する今季の阪神なら、伊藤将の甲子園11連勝は御園生崇男(14連勝)、村山実(2度の12連勝)、若林忠志(11連勝)以来。「レジェンド」が、そう呼ばれるのにふさわしいことを実感させられる。大竹の移籍初登板から2連勝は、球団では03年の伊良部秀輝のみ。古くなくとも、珍しさと懐かしい名前が印象に残った。
阪神で多いのは「江夏以来」や「掛布以来」か。名選手の記録だけでなく、「この人がこんなことを」と驚く瞬間も楽しい。こうした場合、長い記事の横に過去の記録メモや表が掲載される。目立たないことも多く、用意する側としては地味で大変な作業。そんな欄からも、読者に歴史を感じてもらえたら幸いである。
5月末の阪神の9連勝は07年8月30日から9月9日以来だった。前回も岡田監督が率いており、当然、16年前に目を向ける。連勝のわずか10日後。9月19日から8連敗している。3位の同年は5月にも9連敗。当時を知る人々に聞けば、浮き沈みの激しさに「エレベーターシーズンと呼んでいた」と苦笑いしていた。
今回はどうなるのだろう。そこで、比べてみる。07年の10連勝中の先発の最高投球回は6回1/3で、7試合が5回以下。白星も半分の5度だった。リリーフの負担が、その後に影響したことも想像できる。今季の9連勝中の先発は最短6回で6勝。シーズン終盤の9月との比較には少し違和感があるが、戦い方に明らかな差が見られた。
同じ「岡田阪神」。今後もきっと、前回と似たような出来事が起こる。そこに隠れた共通点、変化を探しながら楽しみたい。(阪神担当・安藤 理)