「俺はない。何でこっちがあるのよ。向こうは、せっかく指名したのに(入団しなくて)悪かったなというのはあるかもしれないけど」―。
2012年2月。就任1年目の日本ハム・栗山監督です。前年のドラフトで東海大の菅野を強行指名。野球人としての目標という原監督に「負い目」を感じていませんか…という質問への答えだった。
インタビューしたのはスポーツ報知のY記者。「負い目」ってすげえこと聞くじゃないか。偉い。でも栗山さんとしては当然ですよね。「土下座して謝りたいです」なんて言ったら、ドラフトも、そしてプロ野球も成り立たない。
原さんとの関係を考えれば複雑な心境だったはずだけど、それはそれ。この覚悟が栗山さんにもたらしたものはあまりに大きい。大谷との出会いです。
歴史に「もしも…」は禁句。それでも妄想してしまう。巨人がすんなり菅野を獲得していたらどうなったのか。翌年のドラフトはフリーハンドになるから、二刀流の指名に踏み切れたかもしれない。
結果的に日本ハムの「菅野指名」は「大谷入団」の布石となった。あれから十余年。WBCで胴上げされる指揮官を見ると、こう言わざるを得ない。「栗山さん、要所要所で勝負強すぎるよ」
そんなわけで投打ともに完敗です。新庄さんにとっても原さんは憧れの存在だったはずだけど、容赦ないな。いいように手玉に取られてしまった。
暗黒の4月から光が見えてきた5月。その原動力だった先発投手と4番打者が機能しなければ、こうなるのは仕方がない。週末の連勝を期待しましょう。
それにしてもビッグボス改め新庄監督。やりたい放題に何か「栗山感」が漂っている。自らのアドバイスでサブマリンに転向させた鈴木が快投。そして最後の二刀流締めはWBC決勝へのオマージュなのか。
近未来の侍ジャパン。指揮を執っているのは新庄さんかもしれない。栗山さんが大谷や近藤を起用したように、清宮や万波、野村らチルドレンとともに戦う姿を見てみたい。その時、アメリカ代表では「逆ヌートバー」として加藤豪が人気者になってたりして。