懐かしく、頼もしいフレーズが戻ってきた。26日のDeNA戦(バンテリンD)で、先発・小笠原から祖父江→福→マルティネスとつなぎ、今季初の零封勝ち。20年、3人の必勝パターンは“大福マル”(祖父江「大」輔、「福」敬登、ライデル・「マル」ティネス)と呼ばれAクラス入りの象徴となった。3年ぶりにそろった勝利の方程式に、胸躍ったファンも多いだろう。
ピンチで登場し、佐野、関根を連続三振に斬ってお立ち台に上がった福も「“大福マル”を復活させたいと思っている。(3人の愛称を)名付けてくださったことはいまだに感謝しているし、今季、何回か出せればいい。精いっぱい頑張りたい」と約束。かつて、6回終了時にリードしていれば37連勝という異次元の安定感を誇った3人がそろうのは、最下位からの逆襲を狙う竜にとって、とても頼もしい存在になる。
開幕から中継ぎ左腕が不足気味だった中で、橋本とともに奮闘するのが、国指定の難病「黄色じん帯骨化症」から復帰した福だ。19年から3年連続で50試合登板。昨年こそ36試合に終わったが、今季もシーズン途中に昇格し、12試合で防御率1・13と好成績を残している(29日現在)。
同じ難病を克服したDeNA・三嶋との交流も、両球団ファンの心を温かくさせたが、敵地で見た福のある光景に目が留まった。25日の広島戦(マツダ)で6回2死一塁から登板し、林を二ゴロに打ち取った。その直後、福は本塁と一塁の間に転がっていた林のバットをさっと拾い上げ、回収役のスタッフに渡した。
当たり前の行動かもしれないが、人生や命を懸けて戦うグラウンドには「当たり前」さえ忘れてしまう瞬間はある。なぜ冷静にバットを拾い、ベンチへ戻ったのか。福は「けがする前は自分自身を追い込んで身勝手な行動をしたり、球場の冷蔵庫を殴ったり…。それって人間としてどうなのかな?と、リハビリ期間に思った。そこをテーマにアンガーマネジメント(怒りの管理)や、心をどう整えるかを勉強した。打った、抑えただけで夢を与えるのは違うと思う。アマチュア野球でもそういうのを大事にしているし(プロの)僕らがやればもっと信ぴょう性が出る。そういう姿勢は忘れたくない」と教えてくれた。
確かに福は昨年5月、ハマスタのベンチに置かれた冷蔵庫へ怒りをぶつけていた。褒められたことではないが、猛省し、そこから学べば大きな成長につながる。それに、何歳からだって成長もできる。記者も誤字脱字、ミスリードがないよう凡事徹底を心がけます。(中日担当・長尾 隆広)