6・2開幕「1789―バスティーユの恋人たち―」
宝塚歌劇星組公演「1789―バスティーユの恋人たち―」が6月2日に兵庫・宝塚大劇場で開幕する。星組トップスター・礼真琴が、2015年の月組以来8年ぶりに、フランスの大ヒットミュージカルの再演に挑む。フランス革命に身を投じた、名もなき若者ロナン役。「ただの一人の人間でも歴史を動かすことができる。自分自身も勇気をいただきながら作っています」と“雑草魂”を胸に稽古に励んでいる。(筒井 政也)
民衆の力強い鼓動 タイトルは「ベルサイユのばら」でも知られるフランス革命が勃発した年。絶対王政を倒すべく立ち上がった市民の視点から描く。
宝塚初演時、礼は新人公演世代で7年目に入ったばかり。「拝見して衝撃を受けました。いつか自分も挑戦してみたいという思いがあり、ファンの方々、組のみんなからも『見たい』という声をいただく機会が多かったので、すごくうれしかった」と夢の実現を喜んだ。当時の月組・龍真咲も“歌うまトップ”だったが、現役生随一の歌唱力を誇る礼が、フレンチロックに民衆の熱い魂を吹き込む。
その民衆の中でも当時、下層階級だった農民が主人公。父を殺された怒りから革命に突っ走る。「行動力、覚悟が備わった男性。トップスターだから、主役だからという意味ではなく、一人の演者として、みんなの心を動かせるようになりたい。星組にしか出せない、よくも悪くも勢いのある部分をパワーとして出せれば」と民衆側の力強い鼓動を意識する。
今回は月組版ではなく、東宝ミュージカル版(主演・小池徹平、加藤和樹のダブルキャスト)に近い演出に。前回、トップ娘役はマリー・アントワネット役(愛希れいか)だったが、本作で舞空瞳は恋人オランプ役を務める。「トップコンビで演じる以上、関係性をもっと掘り下げる。お互い話すと、夫婦漫才のように会話がポンポンとかみ合うのが面白い部分。なこちゃん(舞空)も、バシバシとぶつかってきてくれる」とパートナーに信頼を置く。衣装も多彩で「たくさんのお洋服を買うお金が、ロナンのどこにあったんだろうと思うぐらいステキ」と笑わせた。
コロナを乗り越え コロナ前には当たり前の光景だった客席降りの演出も「あります! うれしいことです」。20年2~3月の大劇場トップお披露目公演から見えない脅威と闘ってきた。「コロナも5類になって、少しずついろんなものが戻りつつありますが、『1789』を通じて、コロナを経験した人たちだからこその“前に一歩進む勇気”をお伝えできたら」と言葉をかみしめる。
本公演後に休養へ 一方で、歩みを止める勇気も振り絞った。本公演終了後から約2か月、休養する。病気療養やけが以外でトップが長期間休むのは異例。「今後もよりよい舞台に挑戦していくためコンディションを整える時間に」と礼。組の公演順では、次回大劇場公演は来年元日開幕。劇団創立110周年の「2024」へ向けて、「1789」で「2023」は完全燃焼する。
公演中の6月12日付で、宙組は芹香斗亜(せりか・とあ)が新トップに就任する。芹香の星組在籍時(07~12年)には新人公演を共にした2年先輩だ。「キキさん(芹香の愛称)のカリスマ性は常にリスペクトしています。同じ立場で過ごさせていただける日々はすごく楽しみ」。自身のトップ在任歴は10月に丸4年となり、5年目へ突入。5つの組の中で最長キャリアとなるが「いえいえ、学年で言えば最下級生ですので」。謙虚に学ぶ姿勢が、星組を、歌劇団を強くしていく。
◆日程 兵庫・宝塚大劇場で6月2日~7月2日。東京宝塚劇場で7月22日~8月27日
◆スタッフ 潤色&演出・小池修一郎
◆礼 真琴(れい・まこと)12月2日生まれ。東京都江戸川区出身。第95期生の首席入団者で2009年4月「Amour それは…」で初舞台。星組配属。19年10月に星組トップスターに就任。身長170センチ。愛称「まこっつあん」「こと」「こっちゃん」。
瀬央ゆりあ粋な演出 〇…ともに星組一筋の同期スター・瀬央(せお)ゆりあが本公演終了後に専科に異動する。「(宝塚音楽学校の)予科生の『初めまして』からずっと一緒に過ごしてきたので…」と実感がない様子だが、本来関わる場面はないシャルル・アルトワ(瀬央)のソロに礼が登場する粋な計らいがあり「絡むことができてよかった」と感謝した。また、マリー・アントワネット役の3年後輩・有沙瞳は退団作に。外部劇場作で2度、主演コンビを組んだ間柄で「心をたくさん動かしてくれる素晴らしい役者」と称賛。有終の美を見届ける。