7代目タイガーマスク襲名の武尊に感じた天性の爽やかさと優しさ…ヒーローにふさわしい理由がそこに

スポーツ報知
7代目タイガーマスク発表会見に出席した武尊(右)と初代タイガーマスクの佐山聡氏

 爽やかな初夏の風が吹き抜けるような30分間の会見だった。

 24日、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで行われた「7代目タイガーマスクプロジェクト」発表会見。7代目のタイガーマスクとして登場したのが、格闘家の武尊(31)だった。

 パーキンソン病の疑いのある病気と闘っている初代タイガーマスク・佐山聡さん(65)とともにベージュのスーツで登場した武尊。「いろいろな会見をやってきたけど、今日が一番緊張しています」と、まず本音を漏らすと「両親の影響でプロレスの試合をいっぱい見ていたんですけど、初代タイガーマスクを見て、強さへの憧れを持ちました」と、隣に座った佐山さんをじっと見つめた。

 その上で「子どもたちへの優しさにも感動して。強い人は優しい。たくさんの人に夢や希望、パワーを与える人なんだなと。僕も同じように子どもたちに夢を与えられるように試合をしてきました。もっと、もっと、タイガーマスクという名前を世界に広げて、たくさんの子どもたちにパワーを与えられる選手でいたいと思います」と“7代目襲名”への決意を明かした。

 席上、「有名になる前から慈善活動をやりたいと思っていた」、「格闘家と同時に保育士にもなりたいと思っていました」とも話した武尊。既に昨年から「ラオス教育支援プロジェクト」の一環として現地の学校への訪問や養護施設への寄付などの活動を行ってきた31歳は今後、「7代目タイガーマスクプロジェクト」のもと、養護施設出身者の自立支援を中心とした社会貢献活動を行っていく。

 終始、魅力的な微笑みを浮かべて話す武尊をマスクの奥から温かい目で見つめていた佐山さんは「初めて武尊選手に会った時、なんと爽やかな選手、人間性に優れた選手なんだろうと思いました」と振り返ると、「そして、タイガーマスクの慈善事業を継承してくれないかなと思いました。これからも期待して、タイガーマスクの名前をずっとつないでいただきたいと思います」と期待を寄せた。

 佐山さんの口にした「爽やか」、「人間性に優れた」部分を今回の初めての対面取材での受け答えで感じた私には、会場に着く前から武尊に聞きたい一つの質問があった。

 今回の7代目襲名はあくまで慈善活動が目的でプロレスラーデビューを意味するものではないということは主催者側に会見前から念押しされていた。

 それでも、昨年6月19日に行われた那須川天心(24)との「THE MATCH」。日本中が熱狂した頂上決戦での判定負けから1年。私は現地取材こそかなわなかったが、試合直後の「僕を信じてついて来てくれたファンの方たちやチームのみんなに心から申し訳ないと思ってます」と涙を流しながら言葉を絞り出した武尊の映像に大きく心を揺り動かされていた。だから、質疑応答の時間になった途端、大きく手を挙げて聞いていた。

 「今回の7代目襲名があくまでも社会貢献活動が目的なのは理解していますが、『THE MATCH』での武尊さんの命がけで魅力的な闘いを見た多くのファンはリング上でのタイガーマスクとしての闘いを見たいとも思っています。ご自身の思いは?」―。

 この質問に私をじっと見つめた武尊は両手でマイクを握ると、「今のところは予定がないですけど、それをやることによって、この7代目タイガーマスクプロジェクトがもっと、もっと広がっていくのであれば、僕もそれは考えたいなと思っています」と言葉を濁すことなく、まっすぐに答えてくれた。

 さらに別の記者の質問にも「僕がマスク姿で試合することがあって、それによってこのプロジェクトが広がっていくのであれば、しっかり準備をしての舞台もあり得るのかなと思ってます」と答えた。

 梶原一騎さん原作、辻なおきさん作画の原作漫画によって1968年に誕生した正義のヒーロー・タイガーマスク。1981年4月の新日本プロレス蔵前国技館大会での佐山さんによる初代タイガーマスク誕生から42年。その後、日本のリングには故・三沢光晴さん、金本浩二、現在、新日本プロレスで活躍中の4代目始め現在、フリーとなったあのスターレスラーのタイガーマスクWとしての闘いなど多くのタイガーマスクが登場してきた。

 しかし、梶原一騎さんが生み出した強さと優しさを兼ね備えたヒーローという観点から見て、武尊ほど、その名にふさわしい格闘家はいないのではないか。約30分間の会見を通じて、私はそんな確信に至った。

 会見中、佐山さんから新たに作成した7代目専用マスクをかぶせてもらったニューヒーローは「嬉しい気持ちと身が引き締まる気持ちです」と笑顔で言った。

 まっすぐ言葉を発し続けるこの男の周りには常に爽やかな風が吹いている―。

 その最高の笑顔を捕らえようと、何度も何度もカメラのシャッターを押しながら、私はそう思った。(記者コラム・中村 健吾)

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