◆パ・リーグ オリックス6×―5楽天(24日・ほっともっと神戸)
逆転サヨナラ2ランの対価はキツかった。オリックス・紅林弘太郎内野手(21)の生還を、中嶋監督が待っていた。「他の選手なら抱きつくんですけど…。でも、愛を感じました」。プロ初のサヨナラ打を放った昨年4月21日のソフトバンク戦(京セラD)は、尻へのハイキックで祝福。プロ初のサヨナラ本塁打はヘッドロックでお祝いされた。
1点を追う9回1死一塁で相手は松井裕。「いつもだったら代打だったぞ!」と、後で指揮官に伝えられた。「あそこで打席に立たせてくれた」と心を燃やし、守護神のフォークを左翼席中段へ。「気持ち良かったです」。62年・矢野清の21歳9か月を更新する球団史上最年少21歳3か月のサヨナラ弾で、今季3度目の劇的勝利に導いた。
昨季までの正遊撃手が開幕2軍。打撃だけでなく、あるファームの試合で見せた緩い守備を厳しく叱責(しっせき)されることもあった。「そこで腐ってもしょうがない」とチャンスを待ち、4月18日に初昇格。2軍監督時代から接してきた中嶋監督は「(成長が)超スローペース。なかなか我慢が必要な選手でございます」とあえて辛口だが、ここ一番での勝負強さが魅力でもある。
「格好いいな…」と、つぶやいたのはオフのある日。たまたま、あるトイレのポスターにあったフレーズに目を奪われた。「男が惚(ほ)れる男になる」。左の柱になった宮城と同じ高卒4年目。「そこは変えずにやりたい」と、年齢と同じ21本塁打が目標だ。首位・ロッテと2ゲーム差は変わらなかったが、4連敗からの3連勝と再浮上の気配。パ・リーグ王者には、何かやってくれそうな不思議な男がいる。(長田 亨)