書道家・武田双雲さん、手術で落ち込む日々も考え方変えて脱出「ネガティブラブでポジティブに」

スポーツ報知
江の島のアトリエで揮毫(きごう)した「色即是空」を手に笑顔を見せる武田双雲さん(カメラ・坂口 愛澄)

 書道家・武田双雲さん(47)の著書「ネガティブの教科書 気持ちが楽になる生き方」(きずな出版、1540円)が、年代を問わず幅広い層から好評を得ている。自らの経験談も交えながら、ネガティブの本質に迫った武田氏は「ネガティブを受け入れることから始めてみてほしい」と呼びかけた。(坂口 愛澄)

 よく書道教室の生徒から「先生はいつも明るくて、まぶしすぎる」と声をかけられていたという武田さん。10年前に「ポジティブの教科書 自分も周りの人も幸運体質になる3つの基本と11の法則」(主婦の友社 1034円)を発売したが、そのことで正反対の意味であるネガティブについても関心を持つようになった。

 「教室で『私、ネガティブなんですよね』と聞いているうちに、研究魂が芽生えました(笑い)。僕自身、これまで風邪以外で病気をしたことがなかったのですが、2011年に胆のうを手術したんです。おかゆだけの日々が続き、気分も落ち込み、すごくネガティブに陥ったんですよ。ネガティブ体験をしたからこそ、前向きに考えることは重要だと感じました」

 ネガティブを探っていくと、「社会や環境、脳を含めて人間は基本的にネガティブ寄り」と気づいたという。

 「ネガティブ、ポジティブは一部の見方であり、自由に選択できることが理想。僕たちの日常には、恐怖心や不安がいつも隠れていますよね。著書を通じて、『ネガティブになるのは、あなたのせいじゃない』と伝えたかった。アプローチを変えてネガティブを受け入れることから始めてみてほしいです。自分自身、ネガティブラブになってみると、自然とポジティブ力が上がりました」

 ことあるごとに、さまざまな項目がランキング化され、数字で評価されることが多い世の中について、武田さんは「劣等感を感じるタネが増えている」と指摘した。

 「この世界は劣等感だらけですよ。コミュニケーション能力の差や偏差値だったり、結構しんどいですよね。美容など情報化社会は本当に大変。話は少しそれますけど(大リーグ)エンゼルスの大谷翔平くんなんか、日本のほとんどの男性に劣等感を感じさせたと思いますよ(笑い)。圧倒的なすごさを見せつけられて、嫉妬すらできない。実績だけでなく、かわいらしさとかいたずら心もあったり。批判する人が全くいない、本当に奇跡の人です」

 武田さんは40歳の時、医師からADHD(注意欠如・多動症)だと宣告を受けた。だが、悲観的になることは一切なかったという。

 「なぜか、めちゃくちゃうれしかったんですよ。物をあまりにもなくしたり、何で自分は人と違うのだろうと思っていたので、責めることが少なくなりました。夢の中でも携帯だったり何かがなくて、どこかで自分を責めてた。性質を分かったことで楽になり、自分の扱いがうまくなりましたね。忘れ物も減った気がします」

 現在、書道家として世界中で活躍しているが、駆け出しの頃は「失敗もたくさん経験しました」と振り返った。

 「とあるホール会場で『大きい筆を持って書いてください』と言われたので書くと、お客さんに墨がかかってしまい、大パニックになったことがありました。そんな時、テレビを見ていたらKinKi Kidsさんがファンに色の付いた水をかけているのを目にして、僕も墨をかけて喜ばれるくらいの人になろうと思いました。KinKiのおかげでポジティブになれたことを覚えています」

 私生活では3児の父。子供と接する上で「大好きな親友と一緒にいるような感覚を大切にしている」と明かした。

 「尊敬と感謝を持ち、今いる時間を最大に楽しむようにしていますね。悩みが生じてネガティブになった時は、一緒に悩みます。ただただ話を聞いて、求められない限りアドバイスはしないようにするし、最終的には自分に決めさせています。僕自身、人の悩みを聞くのが本当に好きなんですよ。子供とは、とにかく会話するというのが大事なんじゃないかなと思います」

 ◆武田 双雲(たけだ・そううん)1975年6月9日、熊本県生まれ、47歳。3歳から書家である母・武田双葉氏に師事し、書の道を歩む。東京理科大理工学部卒業後、NTTに入社。約3年の勤務を経て書道家として独立。音楽家や彫刻家などとコラボレーションをするなど、独自の創作活動で注目を集める。NHK大河ドラマ「天地人」など、数多くの題字を手がけ、世界中でパフォーマンス書道を行っている。

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