◆明治安田生命J1リーグ▽第14節 神戸 1―1 柏(14日・三協フロンテア柏スタジアム)
【神戸担当・種村 亮】首位の神戸はアウェーで柏と1―1のドロー。元日本代表FW大迫勇也の今季10ゴール目で先制したが、後半にオウンゴールで追いつかれた。
後半、柏が自陣でボールを保持していた場面だった。プレッシャーをかけにいった大迫は、後方の味方に右手で手招きするようなジェスチャーをしていた。「来い、来い」と。
試合後の公式記録によると、神戸のシュート数はわずか3本。後半に至っては0だった。まさに防戦一方。大迫のジェスチャーは、そんな流れを変えるべく前線から積極的なプレスを仕掛けようというメッセージだったと思う。
ただ、押し込まれた要因は、これまでの試合で機能していたハイプレスがはまらなかったことにある。試合後の会見で、吉田孝行監督は「もう少し前から(プレスに)行きたかったけど、プレスのはめ方は反省しないといけない。相手のシステムが可変気味にやってきたことに対して、試合中に修正しないといけなかった。選手が思いきりプレスをかけられるようにできれば良かった」と自らを責めた。
指揮官は「(陣形が)間延びしてしまった」と指摘したように、特に後半は選手間の距離が広がり、空いたスペースでのこぼれ球の奪い合いは柏が圧倒していた。これまでの神戸は前線から積極的な守備を仕掛けてパスコースを限定し、それに合わせて中盤やDFの選手がインターセプトやセカンドボールを狙う。敵陣でプレーする時間が長かったことでよりゴールに迫る機会が増え、失点のリスクも減らすことができた。ただ、この日は後半から入った柏の193センチFWフロートのパワーとスピードを警戒するあまり、DFラインはズルズルと後退。MF斉藤未月が「カウンターをやり合う、リスクのあるサッカーになってしまった」と振り返った。
課題は修正可能だが、今後も同じスタイルを貫けるかは難しさもある。1つは体力。夏場に強度が高く、テンポの速いサッカーをベースとし続けることはハードで、今回の試合でも後半に運動量が落ちた印象は強い。さらに問題なのは、チーム内には替えがきかない選手が多いこと。もちろんコンセプトは全員が理解しているが、今季の躍進は大迫と元日本代表FW武藤嘉紀の好調抜きには語れない。何らかのアクシデントで2人が稼働できない事態が発生した場合も想定しなければならない。それほど、シーズンは長い。
前例のないスタートダッシュに成功した神戸。2019年に天皇杯を制した時も感じたが、型にはまった時の勢い、破壊力は本物だ。リーグ戦残り20試合も勢いでゴリ押しするのか、あるいは―。2位の昨季王者・横浜FMとの勝ち点差は3に迫っている。