駒大、今季も強し! 試金石関東インカレハーフで赤星雄斗&山川拓馬がワンツー 主力抜きでも力見せつけた

スポーツ報知
表彰式で笑顔を見せる赤星雄斗(右)と2位の山川拓馬

 関東の大学の長距離ランナーにとって、箱根駅伝と並ぶ2大イベントの関東学生陸上競技対校選手権(通称・関東インカレ)が5月11~14日、相模原ギオンスタジアムで行われた。昨季、学生駅伝3冠の駒大はハーフマラソンで赤星雄斗(4年)が優勝、山川拓馬(2年)が2位になるなど主将の鈴木芽吹(4年)ら主力抜きでも強さを見せつけた。中大、青学大、順大などライバル校は懸命に王者を追う。駅伝シーズンを占う上半期の大一番は、今年も熱戦だった。(竹内 達朗)

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 駒大、強し。「関東インカレを制する者が箱根を制す」という格言があるほど重要な戦いで、王者・駒大はライバル校や駅伝ファンに圧倒的な力を見せつけた。

 各種目1位8点、2位7点…8位1点が与えられ、総得点を競う対校戦。1500メートル以上の5種目で、駒大は2部校で4番目の23点だったが、その中身は濃かった。

 駅伝に直結するハーフマラソンで、今年の箱根駅伝8区4位の赤星と、同5区4位の山川がワンツーフィニッシュを決めた。5000メートルでは同7区5位の安原太陽(4年)が7位入賞。1万メートルでは同6区区間賞の伊藤蒼唯(2年)が8位入賞。それぞれ、箱根駅伝Vメンバーらしい実力を発揮した。「箱根駅伝王者のプライドを持って臨みました」と赤星は胸を張って話した。

 箱根駅伝Vメンバー以外でも頼もしい選手が復活した。2年時に箱根駅伝1区2位と好走したが、3年時の昨季は故障などのため3大駅伝すべてに欠場した唐沢拓海(4年)が1万メートルで日本人トップの4位と健闘した。それでも、唐沢は「勝てなかったことは情けない。4位では何も面白くない」と全く満足することなく話した。不調のまま終わった昨季については「駒沢に陸上をやりに来たのに、自分は陸上をやっていない、と思いました」と悔しそうに振り返る。ラストイヤーにかける思いは強い。「全ての駅伝で1区を走りたい。駅伝シーズンから(来年)1月の箱根駅伝まで良い状態で持っていく。走るからには区間賞、最低でも3番以内が目標です」と意欲的に話した。

 主将でエースの鈴木芽吹(4年)、ハーフマラソン日本人学生最高記録(1時間11秒)を持つ篠原倖太朗(3年)、5000メートル日本人学生歴代7位(13分22秒91)のスピードランナー佐藤圭汰(2年)は4月に実業団選手らが出場したレベルの高いレースに参戦したため、関東インカレは欠場した。

 今季から大八木弘明監督総監督(64)の後を受け、チームを指揮する藤田敦史監督(46)は「関東インカレに出場した選手たちはよく頑張りました。主力の3人(鈴木、篠原、佐藤)がいない中、めぐってきたチャンスを生かした。『駒大には自分よりもっと強い選手がいる。他大学の選手には負けていられない』という気迫を感じました」とうなずきながら話した。

 駒大はチームの雰囲気もいい。大会最終日には鈴木主将らも会場に駆けつけ、ハーフマラソン、5000メートルで力走するチームメートを声を枯らして応援した。関東インカレに出場しない選手はレースが行われない空いた時間に相模原ギオンスタジアムに併設されたクロスカントリーコースなどで精力的に走り込んだ。

 駒大の充実した戦力に、強気で鳴らす青学大の原晋監督(56)も脱帽するしかない。青学大は、スピード種目の1500メートルと3000メートル障害で大量得点し、2部校でトップの43点を挙げたが、スタミナ勝負のハーフマラソンでは大敗を喫した。「今季の駒大は、3冠を果たした昨季以上に強い。大学駅伝史上最強チームでしょう。対抗するには大変です」と原監督は厳しい表情で話した。

 今春、大エースの田沢廉(現トヨタ自動車)や前主将の山野力(九電工)らが卒業したが、駒大に不安要素は見当たらない。「先輩を超えられるようなチームになりたい。1人で穴を埋めるのは難しいですが、全員で埋めていきたい」と赤星はチームの思いを代弁する。駒大は史上初の2年連続学生駅伝3冠へ、そして、と記念すべき第100回箱根駅伝に向けて順調に走っている。

1部1位・順大 1500メートル以上の全5種目で得点。男子の総合優勝に駅伝チームも大きく貢献した。東京五輪3000メートル障害7位入賞のエース三浦龍司(3年)は専門外の5000メートルで連覇を達成。「今季、やっと手応えのいいレースができた」と納得の表情で話した。スーパールーキー吉岡大翔も5000メートルで4位入賞するなど新戦力も台頭。今年の箱根駅伝5位の名門校はトラックでもロードでも存在感を発揮している。

1部2位・早大 5000メートル3位の山口智規(2年)、1万メートル6位の工藤慎作(1年)ら下級生の活躍は大きな収穫。今年の箱根は故障で欠場した山口は「来年の箱根駅伝では2区で勝負したい」と力強い。今年の箱根駅伝2区10位の石塚陽士(3年)は1万メートルで3位に入賞し、同9区9位の菖蒲敦司(4年)は3000メートル障害で3連覇を飾るなど主力も順調。今年の箱根駅伝は6位でシード権を奪回した。就任2年目の花田勝彦監督(51)率いる早大は上昇気流に乗っている。

1部6位・中大 今年の箱根駅伝2区区間賞の吉居大和(4年)、同3区区間賞の中野翔太(4年)らは欠場。駒大と同様にエース格を抜きで戦ったが、主力の湯浅仁(4年)がハーフマラソンで2位、3大駅伝未経験の浦田優斗(3年)が3000メートル障害で2位など好結果を残した。の1992年バルセロナ五輪1万メートル日本代表で前監督の春生さん(61)を父に持つ浦田は「来年の箱根では6区を走って優勝に貢献したい」と目を輝かせて話した。今年の箱根駅伝は2位。王者の駒大は強いが、中大も1996年以来、18年ぶり最多の15回目の箱根路制覇のチャンスは十分にある。

2部1位・青学大 1500メートルと3000メートル障害で1、2位。1、2部を通じて最多の43点を獲得したが、原晋監督は決して満足せず。ハーフマラソンで20位、23位、38位と大苦戦したことに指揮官は危機感を募らせる。一番の明るい材料は5000メートルで日本人トップの3位に入った“未完の大器”鶴川正也(3年)。「箱根で駒大に勝つには鶴川が1区で圧倒的な区間賞を奪うくらいのインパクトが必要」と原監督は期待を込めて話した。

 ▽関東インカレ 1919年に第1回大会が行われ、今年、第102回大会が行われた。1920年に始まり、今季(来年1月)第100回大会を迎える箱根駅伝より長い歴史を持つ。例年5月に開催され、各種目1位8点、2位7点…8位1点が与えられ、対校戦で総得点を競う。出場は各種目1校3人以内。男子は16校の1部、それ以外の2部、大学院生の3部に分けられる。1部の15、16位と2部の1、2位が翌年、入れ替わる。1部と2部は短距離種目などを含めた総合力で決まるため、今年の箱根駅伝優勝の駒大や同3位の青学大など長距離・駅伝をメインに強化している大学は2部に属する。今年の箱根出場20校は1部11校、2部9校に分かれる。シード校に限ると1部、2部ともに5校。長距離種目においては1部と2部にほぼ実力差はない。サッカーのJ1とJ2というよりも、プロ野球のセ・リーグとパ・リーグの関係に近い。安定したペースで進み、好記録が生まれやすい記録会と異なり、関東インカレでは駆け引きがあり、ペースは乱高下する。「記録」より「順位」。「速さ」より「強さ」が求められる。

 ◆竹内達朗が選ぶMIP 1部ハーフマラソン3位の東洋大・梅崎蓮(3年)。10キロ過ぎに2位集団を抜け出して山梨学院大のキピエゴ(1年)を追走。一時は10秒差まで迫った。終盤に突き放され、中大の湯浅仁(4年)にも抜かれたが「日本人トップではなく優勝を目指した」姿勢は印象に残った。ダブルエースの松山和希(4年)、石田洸介(3年)を故障で欠く中、梅崎が鉄紺の意地を見せた。今年の箱根駅伝では、梅崎が9区4位と好走して11位から9位に浮上。最終的にはぎりぎりの10位でシード権を確保した。「来年は優勝を目指します」と梅崎は力強く話す。走力と言葉でチームを引っ張っている。(箱根駅伝担当)

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