大谷翔平とベーブ・ルース「唯一無二」「比較対象者もいない」…AKI猪瀬さん「二刀流」だけではない2人の共通点

スポーツ報知
ピークの時は年間約220試合の解説をしていたというAKI猪瀬さん(カメラ・堺 恒志)

 MLBジャーナリストのAKI猪瀬さん(53)が「大谷翔平とベーブ・ルース 2人の偉業とメジャーの変遷」(KADOKAWA、1034円)で、なぜ大谷が2ケタ勝利&2ケタ本塁打を達成できたのかを、往年の名選手と比較して明らかにした。「二刀流」だけではない、2人の共通点が浮かび上がったという。(太田 和樹)

 「野球の神様」として知られるルースは1918年に13勝&11本塁打を記録し、メジャー初の「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」を達成した。AKIさんによると、当時はデッドボールと呼ばれる粗悪な質で飛ばないボールが当たり前。本塁打をめったに見ることができない時代にルースは大記録を打ち立てた。

 「ルースがなぜすごいのかというと、本塁打が全く出現しない時代にルースだけ本塁打を打つんです。シーズン30発だった時、他は1ケタ台の人しかいない。ルースが出る試合に行かないと本塁打という現象を見ることはできなかったんです」

 大谷も昨季、15勝&34本塁打でルース以来104年ぶりに「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」を達成。150年を超えるメジャーの歴史の中でルースと大谷しか達成していない。

 「大谷も、大谷が出る試合に行かないと二刀流を見ることはできない。唯一無二の存在で、(空想上の)ユニコーンみたい。競争すべき相手もいないし、比較対象者もいない」

 大谷とルース。両者の共通点といえば「二刀流」だが、AKIさんは「両者が唯一無二の存在であることが共通点だ」と語る。

 「二刀流をやっているという共通点よりも、何百万、何千万円のお金を使っても現地に行かないと、そのすごさを見られない。それが一番の共通点。2ケタ勝利&2ケタ本塁打は、もしかしたら今後達成できる選手は出てくるかもしれない。でも大谷もルースもその時代でたった一人。100年に1人の逸材ですから」

 ルースは「メジャーリーグ」という文化を創り上げた。大谷は、指名打者(DH)を解除して先発登板した試合で、降板後もDHに残れる通称「大谷ルール」が22年に導入されるなど、メジャーの歴史を大きく動かした。

 「ルースはデッドボールの時代に本塁打を量産し、客を呼んだ。当時はベーブ・ルースにおんぶにだっこ。MLBの人気がうなぎ登りに上がっていった。今は大谷におんぶにだっこ。MLBとしては大谷でマーケットを広げたい。そこに通ずる思いは当時のコミッショナーも今のコミッショナーも同じです」

 ルールまで変えてしまう理由は至ってシンプル。両者が球場にファンを呼ぶことができる選手だからだ。

 「球団経営とかビジネス面、人気などを考えても、お客さんを呼ぶことは大切です。『野球の花はホームラン』っていうのは最初からあった言葉じゃなくて、ルースが本塁打を打つから出てきたわけだしね」

 大谷は3月に行われたWBCで日本の3大会ぶり3度目の優勝に貢献。AKIさんもラジオで解説しながら優勝の場に立ち会った。

 「チームUSAは皆さんが思ったほど強くはないとずっと公言していた。打つ方は超一流だけど、投げる方は侍(のレベル)とは違うので安心してください、絶対勝ちますよって言っていたのでホッとひと安心。安どの気持ちが大きかったですね」

 大会終了後、AKIさんはこの本を発売し、サイン会を実施。定員50人の会場に100人以上が来場した。その中にはWBCで初めて野球に興味を持った人もいたという。

 「これがWBCを開催している本当の意味。野球ファンを増やすとか、ヨーロッパなど野球のマーケットがない所にマーケットを広げていくことがMLBの思惑です。でも、その通りになって地道にでもファンが増えていってくれるとうれしいし、MLBというコンテンツが大きくなっていくことは喜ばしい気はしますね」

 ◆AKI猪瀬(本名・猪瀬明彦=いのせ・あきひこ)1970年4月7日、栃木県生まれ。53歳。宇都宮リトルシニアで野球を始め、宇都宮工高に進学。89年に映画について学ぶためアメリカに留学。帰国後、見習いの脚本家などを経て97年にMLBの番組のオーディションに合格し、解説などで活躍している。

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