埼玉・深谷市は高校野球でも注目のスポットに 伝統校復活へ“一人三役”務める深谷商・鈴木百太の可能性

「エース・4番・主将」として深谷商をけん引する鈴木百太
「エース・4番・主将」として深谷商をけん引する鈴木百太

 埼玉県深谷市と聞いて連想するものは-?

 白くて甘い深谷ネギ。東京駅を模し、レンガで作られた深谷駅の駅舎。新一万円札の顔となる渋沢栄一の生誕地として取り上げられることも増えた。

 そして、この春。「深谷」は高校野球でも注目されることになった。「深谷商に、体が大きく面白い選手がいる」―。4月12日、春季埼玉県大会北部地区予選が行われている熊谷公園野球場へ足を運んだ。話題の主は、鈴木百太(ひゃくた)投手(3年)。187センチ、98キロの巨漢で、メンバーがわずか15人というチームで「エース・4番・主将」の一人三役を務める。

 深谷商は、1971年の春夏の甲子園に出場した県立の伝統校。しかし、最近10年の夏の大会で初戦突破したのは3度しかない。この日、鈴木は、格上のシード校・本庄第一に対し堂々たる投球を展開した。右腕から左打者の内角低めへ角度良く投じるストレートは絶品。大柄でも器用さがあり、4種類の変化球を操って的を絞らせなかった。6回までノーヒットに封じ、4安打完封。3―0で勝利を収め「(無安打は)メチャクチャ意識しました」と言って表情を崩した。

 深谷市内の中学での軟式野球を経て深谷商に入学した。子供の頃からエースで4番。わんぱくな野球少年が、そのまま高校生になったような印象だが、発する言葉は“お山の大将”ではなかった。奪った8つの三振のうち、4つを8、9回に記録。「最後の方で打球が飛んで来ると、野手は緊張する。エラーをするかもしれないので、三振を取りにいきました」。たとえ失策が出たとしても、カッカすることはないという。「小中とも、ガチガチに強いチームではありません。エラーは1試合に2、3個あって当たり前です」

 本人が把握している最速は138キロ。「部のスピードガンが壊れてしまって…」と最新の数値は不明だが、冬のトレーニングで体重を7キロ絞っており、球速が伸びている可能性はある。

 チームは続く代表決定戦で熊谷工を破り、12年ぶりに地区予選を突破した。県大会は1回戦で強豪・上尾に0―10で6回コールド負けを喫したが、勝負の夏へ貴重な経験を得た。「OBの方がいるので、火を絶やさないように。地元の選手が集まる形で頑張っていきたい」と板坂将吾監督(39)は話す。深谷の伝統校の、さらなる躍進へ。身も心もでっかい鈴木百太が、その旗印となる。

(アマチュア野球担当・浜木 俊介)

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