◆東都大学野球春季リーグ戦第3週第1日▽青学大1―0中大(1日・ZOZOマリン)
息詰まる投手戦は青学大が先勝した。最速153キロ右腕の下村海翔(4年=九州国際大付)がリーグ戦初完封となる4安打のシャットアウト勝ちで今季3勝目。2回2死では初谷健心遊撃手(2年=関東第一)が中大のドラフト上位候補右腕・西舘勇陽(4年=花巻東)から右越えソロを放ち、1-0で逃げ切った。
マリンの風が火照った体に心地よい。下村は拳を握り、小躍りして歓喜に浸った。中大・西舘との投手戦を1-0で制して、初の完封勝ち。「1点しかないのはプレッシャーでしたが、バックが無失策。内野陣が声をかけてくれました。投げやすい環境を作ってくれました」。好守でもり立ててくれた仲間に感謝した。
この日の最速149キロのストレートに、カットボールも切れた。4度得点圏に走者を背負ったが、危なげなく丁寧に料理。「四球を出さないように、ゾーンの中で勝負するつもりで投げました。とにかくゼロでいくしかないと」。攻撃的な投球を最後まで貫き、9回にも146キロと球威は衰えることがなかった。
どん底を味わった。1年生だった2020年12月10日、痛みのあった右肘のクリーニング手術と軟骨再生手術を受けた。当初は投げられるまで半年との見通しだったが、1年を要した。「ボールは握れなくても、できることはある。絶対自分なら、はい上がれると思っていました」。地道に走り込みや体力強化など、鍛錬に取り組んだ。
「順調にいかなかった時期は悔しい思いもしたし、落ち込んだこともありましたが、こうやって1部の舞台で勝つことをずっと頭に置いて、そこを目指してやってきた」。そして、こう続けた。「自分のやってきたことは間違いじゃなかった。その期間があったからこそ、今の自分がある」
安藤寧則監督も感無量の表情で言った。「手術から順調に回復できなかった頃が頭によみがえってきて…。本当に良かったなあと。一生懸命、コツコツやってきたのを見てましたから。それを力に変えて、きょうにつながったのが本当にうれしいです」。たくましい最上級生の姿に目を細めた。
ウイニングボールは兵庫から生観戦に訪れた両親に贈る。「遠いところから来てくれたんで、勝てて良かったです」と下村。苦しみをバネに成長した姿を見せられた。最高の親孝行になった。(加藤 弘士)