◆明治安田生命J1リーグ▽第9節 川崎1―1浦和(23日・等々力陸上競技場)
川崎の吉田明宏社長が23日、取材に対応した。今月5日のルヴァン杯後、サポーター団体が掲げたクラブ批判の横断幕を受け「我々がどう変わっていくかが大事。これを機会に会社自体が変わっていけばいい」と話し、クラブとして地域に根ざした活動の重要性を再認識したことを明かした。
* * *
発端は5日の試合後。「地域密着は後回し、功労者は次々と辞めていく。吉田、富士通体制の事業方針はこのままでいいのか?」。チーム成績に対してではなく、クラブの経営方針に抗議する異例の主張だった。
吉田社長はこの事象を受け、ステークホルダー、サポーター、若手やベテランを問わず複数のクラブ社員と対話を重ねたという。結論は「地域密着、地域貢献がフロンターレのベースにある。もう1回、やっていこう」というものだった。
「2017年に初優勝してから、会社の規模も大きくなり、新しい社員も増えた。コロナもあって、少しずつ(地域から)遠のいてしまっていた。ああいうこと(横断幕の掲出)が出てしまったことは、もう取り戻すことができない。我々がどう変わっていくか」
* * *
どの国であれ、「リーディングクラブ」と言われるクラブにおいて、本当の意味での地域密着を体現することは難しい。
川崎の21年度の営業収益は約70億円。10年前の11年度は約32億円だった。数字の上でクラブ規模は倍以上となり、この間、リーグ優勝は4度を数える。
より大きい市場の開拓を目指すことは「会社」である以上当然だ。いわゆるDAZNマネーにより、川崎はやり方次第でJクラブにとって未踏の領域に足を踏み入れることだって可能なクラブになった。そんな時に、今回の摩擦が生じた。
地域との距離が、心象の面で少なからず遠のくことは避けられないだろう。これまで通りに、とはいかない。サポーターも、そのことは一定程度理解する必要がある。
一方で、海外から多数の来場者を見込んだり、海外企業と大型契約できたりするような、欧州のメガクラブ的ビジネスモデルを構築することは難しい。極東の島国には事実上不可能だ。Jクラブは、足元を見つめた地道な経営「も」欠かしてはならない。
地域をとるか、ビッグビジネスをとるか、の二択を迫られるわけではない。クラブとサポーターの双方に、歩み寄りと理解が必要だろう。今回の一件でサポーター側がつけ上がってはいけないし、クラブ側はサポーターを恨んでもいけない。
* * *
それはさておき。というか、本当にさておかないと、それどころではない。この日のドローで15位に後退した。リーグ日程の4分の1を消化した段階で2勝しかしていない。
地域密着を謳うのならば、そして地域密着を求めるのならば。クラブに関わる全員の力で、この苦境を脱しなければならない。
昨今、Jリーグは観客動員に苦戦している。コロナ禍前の水準の8割未満というクラブが多いと聞くが、等々力は、もう戻った(すごい)。川崎は、平日夜開催のルヴァン杯1次リーグに1万8000人を集めるクラブになったのだ。
誇るところは誇り、改善できるところには手を加えて。チーム、クラブ、街全体でこの苦境を乗り越えていくべきだ。
サポーターではなく、クラブの人間でもない番記者にできることは…。取材ぐらいしかないので、自分も頑張ります。(川崎担当・岡島智哉)