歌舞伎俳優の松本白鸚(80)が1969年の日本初演以来、半世紀以上ライフワークにしてきた主演ミュージカル「ラ・マンチャの男」(24日まで)のファイナル公演が14日、神奈川・よこすか芸術劇場で開幕した。カーテンコールで1300人によるスタンディングオベーションが10分以上も続き、白鸚は万感の表情で「ありがとうございました」と感謝を述べた。
スペインの作家ミゲール・デ・セルバンテスの「ドン・キホーテ物語」にセルバンテス自身の人生を重ね、あるべき姿のために闘う男の物語。昨年8月に東京・日生劇場で終止符を打つはずだったが、新型コロナの影響で25公演中18公演が中止に。仕切り直しのファイナル公演初日にセルバンテス=ドン・キホーテことアロンソ・キハーナ役として1315回目の舞台に立った。
ステージ中央の階段が緩やかな角度に改良されるなど、細かい演出変更はあったが、「事実とは真実の敵なり」などの名ぜりふは健在。名曲「ラ・マンチャの男(われこそはドン・キホーテ)」「見果てぬ夢(騎士遍歴の唄)」などで伸びやかな歌声を響かせ、アルドンザ役の次女・松たか子(45)も迫真の演技で盛り上げた。
26歳での初演から54年。米ニューヨークのマーチンベック劇場で60公演、全編英語の主演も経験し、歌舞伎の「勧進帳」の弁慶と並ぶ当たり役にしてきた。チケットは全公演完売。1324回となる24日の千秋楽まで見果てぬ夢を追い続ける。(有野 博幸)