◆明治安田生命J1リーグ▽第7節 神戸 0―0 新潟(9日・ノエビアスタジアム神戸)
【神戸担当・種村 亮】神戸はホームで新潟と今季初のスコアレスドロー。首位の座は守ったが、連勝は2でストップした。
大きな声では言えませんが…個人的にJ1で一番魅力的な試合をしているのは新潟だと思う。「魅力的」だと感じる理由は、現在FC東京を率いるアルベル監督時代から続くパスサッカー。最終ラインから始まる連動したビルドアップに加え、両サイドアタッカーのドリブル突破、トップ下・伊藤涼太郎の卓越した技術とセンスあふれるプレーが神戸に対してどこまで発揮されるのか、非常に興味深かった。
結果は0―0。序盤は新潟のパスワークに圧倒されていた神戸だが、決定的な場面は作らせなかった。後半に入ると生命線とも言える前線からのプレスの強度、圧力が増したことで敵陣でのプレーが長くなり、元日本代表FW大迫勇也を起点にしたチャンスの数も増えた。特徴が大きく異なる両チームが、それぞれ良さを発揮した一戦だった。
下部組織を含め6シーズンを過ごした古巣と公式戦で初対戦した元日本代表DF酒井高徳は「ボールを保持する形が洗練されているなと思った」と新潟を評価すると同時に、こうも話した。「上手でしたけど、自分の中では怖さは感じなかった。個人的には『良いサッカーの定義って何?』って思ったりもする。(ボールを保持していなかった)僕たちのゴールが入っていれば良いサッカーって要らないよね、と」。良いサッカーの定義。印象に残るフレーズだった。
きっとサッカー観の数だけ答えがあり、全員にとっての正解はない。1つのクラブ内においても変化していくもので、神戸もかつてはパスサッカーを志向していた。2018年にスペインの名門バルセロナから元スペイン代表MFイニエスタが加入。クラブは「バルサ化」の名のもとにボール保持へのこだわりを強めていき、20年元旦には天皇杯を制してクラブ初タイトルを手にした。が、今は大迫や元日本代表FW武藤嘉紀といった最前線の個の力を生かすためにロングボールを多用した攻撃に重きを置いている。戦術変更が奏功し、昨季は最下位から脱出しJ1残留を確定。今季は第2節から首位の座をキープしている。
神戸の例だけ見ても「良いサッカー」は1つではない。指揮を執る監督の考え方や選手の能力、様々な要因によって形を変えていっている。今のチームにとっては現在のスタイルが最適解であるだろうし、選手たちからも自信がにじみ出ている。
ただ一点、気になるのは途中出場が続くイニエスタの存在。近年のクラブの象徴でもある司令塔をどのように生かしていくのか。リーグ戦の約5分の1を終え、理想的なスタートダッシュを切った神戸が今後どういった戦い方を選ぶのか注目したい。それが世界的スターにとっても「良いサッカー」であることを願っている。