【横綱昇進・連載アーカイブ】〈5〉第66代横綱・3代目若乃花

スポーツ報知

 スポーツ報知では過去に横綱が誕生した際には、その人となりを取材し、緊急連載の形で紙面に掲載してきた。歴代の横綱の素顔や番付最高位までの過程をアーカイブとして掲載する。今回は「お兄ちゃん」の愛称で親しまれ、弟・貴乃花とともに平成初期の大相撲ブームを巻き起こした3代目若乃花。史上初の兄弟横綱が誕生した、その瞬間を振り返る。(1998年5月掲載)

 若乃花が青春時代を過ごした東京・中野区の明大中野中・高には横綱昇進を祝う横断幕が27日から、飾られた。

 貴乃花は横綱昇進後、同校の校庭で土俵入りを行っているが、若乃花の恩師、武井美男・相撲部監督(48)は「親方とも相談し、できるだけ早く若乃花の土俵入りも実現したい」と声を弾ませた。

 武井監督の印象にもっとも残る若乃花は「いつもニコニコ笑っていた」という。つらいけいこをこなした後でも、若乃花は泣き顔や苦しい顔を見せずいつも笑顔だけを見せていたという。

 小学校時代からわんぱく相撲で鳴らした貴乃花に対し、若乃花は入部当時シコも満足に踏めなかった。だが若乃花は中学1年の時85キロもあった体重を、激しいけいこで3年の時には70キロまで落とした。成長期に余分な脂肪をそぎ落としたことで、現在のまるでアスリートのような筋肉質の下半身の土台が築かれた。「ああいう体は鍛えてないとできないんだよ。だから、今でも人には言えない努力をしているはずだよ」と武井監督は言う。

 いよいよ横綱として他の力士の挑戦を受ける。「心配するのは、横綱になって受け身の相撲を取らないようにということだけだね」と武井監督。

 間垣親方(元横綱・2代目若乃花)も「今の相撲を伸ばしていくことを考えた方がいい。横綱らしい相撲とか、受ける相撲を取ろうとか考えるといい結果は出ないと思う」。

 自分らしい相撲をいかに取り続けていけるか。若乃花が真の横綱として君臨することができるかどうかは、その一点にかかっている。(草野直樹)=おわり=

スポーツ

個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請 報知新聞150周年
×