現役時代、泥にまみれて大打者へと上り詰めた広島・新井貴浩監督(46)が、激しい雨に打たれながら監督1勝を手にした。6回、阪神の攻撃中に雨脚が強まり、21分間の中断の末にコールドゲーム。“ウィニングボール”となった最後の打者・佐藤輝のファウルの球をポケットにしのばせ、ナインと整列してファンに勝利を報告した。「うれしい初勝利。うれしいのとホッとしているかな」。苦しみから解放された笑顔を浮かべた。
この日は現役時代ともにプレーした会沢、田中を今季初めてスタメンで起用した。「なかなか思うように流れが来ない中、きょうはベテランの経験、力を借りました」。リーグ優勝の喜びを分かち合ったメンバーと、球団の新任監督としては73年・別当薫氏の5連敗以来の連敗を4で止めた。
笑顔を絶やさない指揮官にも、キャンプ中から見えない重圧はあった。経験のない監督業。疲れているはずなのに、2時間ごとに目が覚めた。それでも苦悩は絶対に表に見せなかった。開幕戦からミスも目立ったが、一度も選手を責めることはなかった。“やらされた”現役時代の苦しい経験から“信じること”が監督としての信条だ。「彼らの力はこんなもんじゃないと分かっている。4連敗でも慌てることはなかった」
監督初勝利がマツダ通算500勝の節目にもなった。「関わったすべての方々に感謝したいし、ファンの方々にも。(旧)市民球場は、若い頃からうまくいかずに苦しい思いが詰まった場所。マツダスタジアムは、すごくいい思い出が詰まった場所。次は501勝目を目指して、またベストを尽くしたい」。遠かった1勝を手に、すぐに次の勝利に目を向けた。(畑中 祐司)
◆新井 貴浩(あらい・たかひろ)1977年1月30日、広島県生まれ。46歳。広島工、駒大を経て、98年ドラフト6位で広島入団。07年オフに阪神にFA移籍し、15年に広島復帰。16年に2000安打(通算2203安打)を達成し、25年ぶりリーグ優勝に貢献してMVP受賞。本塁打王(05年)、打点王(11年)を各1度。18年限りで引退。昨年10月に監督就任。189センチ、102キロ。右投右打。