【UWFとは何か】<36>高田延彦らを3連破した船木誠勝は前田日明を倒さずしてエースになったが…解散→3派に分裂

スポーツ報知
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 ついに船木誠勝がメインイベンターとなった。「U.W.F. IDEA」(1990年6月21日・大阪府立体育会館)で、山崎一夫をレフェリーストップで撃破すると、8月13日の横浜アリーナ大会「U.W.F. “CREATE”」で高田延彦とのメインイベントに挑んだ。89年8月13日の同会場で高田を掌底打ちでKO寸前まで追い込みながら、なぜか10カウントが数えられず、結局は逆転負けを喫していただけに、決着戦となった。

 今回は序盤のラッシュを抑え、グラウンドの展開をこなしてから打撃戦に。船木の左掌打で高田は鼻血を流し、さらに掌打の応酬で高田が左まぶたをカット。ドクターストップで船木の勝利となった。「人間の体って強く当たれば切れるようになってるから、山崎さんといい、高田さんといい、血が出て止まったのが悔しい。ギブアップで参った言わせたかった」とメインを制してエース格となった船木は頼もしく語った。

 9月13日の愛知県体育館大会「U.W.F. MOVE」では、前田日明VS高田をセミファイナルに追いやって、メインで師匠格の藤原喜明をKOしてみせた船木。4強から3連勝の快進撃で、10月25日の大阪城ホール大会「U.W.F. ATLANTIS」でエースの前田に挑んだ。ヘビー級の前田の重いキックを浴び、ハイキックは、つかまれ裏アキレス腱固めで倒される。掌底打ちとキックでラッシュで前田に鼻血を出させたものの、ダウンは奪えず。膝蹴りでダウンを奪われ、最後は裸絞めで無念のギブアップ。

 エースの座を守った前田だったが、この試合がUWFでの最後の試合になった。

 この試合後の大阪城ホールの控え室で前田がフロント批判をぶちまけたのだ。東京ドーム大会「U‐COSMOS」(1989年11月29日)などの冠スポンサーだったメガネスーパーが新団体SWSを直前の10月18、19日に旗揚げ。選手移籍や団体買収という噂がかけめぐっていた。創業エースとして聞かされていない前田が神真慈社長への不信感をオンオフがあいまいな状況で報道陣にまくしたてたのだ。

 これが報道されると、同28日に神社長が記者会見を開き、前田の発言を「会社に対する背任行為」として5か月間の出場停止処分を発表した。力道山の日本プロレス時代からジャイアント馬場の全日本、アントニオ猪木の新日本とエースがワンマン社長を務めてきたプロレス界。UWFは社長とエースを切り離すことで、音楽業界を参考にするなど新たなビジネスモデルで興行会社として成長してきたが、UWFの象徴がフロントに失脚させられる形となった。

 これによって12月1日の松本運動公園総合体育館大会「U.W.F. ENERGY」は初の前田抜き興行となり、船木がエースとしてメインイベントに登場。船木はウェイン・シャムロックを逆エビ固めで下し、前田を倒さずして世代交代を実現。試合後にリング上からマイクで「前田さん、出てきてください」と呼び出し、全選手が万歳三唱し、選手会の一致団結をアピールしたが、これがラスト興行となった。一大ブームを巻き起こした第2次UWFはわずか2年8か月で解散した。

 通算成績で勝ち越した5強は、前田がリングス、高田、山崎がUWFインターナショナル、藤原、船木が藤原組を旗揚げし、3派に分裂した。高田だけがUWFの3文字を残した。藤原組は「新UWF藤原組」と発表されたが、旗揚げ戦前にUWFを外した。いずれにしても第1次UWFからエースだった前田のUWFが終わった。=敬称略、第2次UWF編は終わり=

 ◆「U.W.F. “CREATE”」(1990年8月13日・横浜アリーナ)

 ▽15分1本勝負

△冨宅祐輔=1分け=(時間切れ)垣原賢人=1分け=△

 ▽45分1本勝負

〇バート・ベイル=3勝3敗=(9分27秒、裸絞め)中野龍雄=8勝14敗1分け=●

〇バート・コップスJr.=1勝=(10分13秒、腕十字固め)鈴木みのる=4勝11敗3分け=●

〇前田日明=24勝3敗=(13分52秒、裏アキレス腱固め)安生洋二=10勝13敗3分け=●

〇藤原喜明=14勝4敗=(7分58秒、腕固め)ディック・レオン・フライ=1勝2敗=●

〇船木誠勝=6勝6敗=(12分18秒、ドクターストップ)高田延彦=17勝8敗=●

 ◆「U.W.F. MOVE」(1990年9月13日・愛知県体育館)

 ▽15分1本勝負

〇冨宅祐輔=1勝1分け=(14分19秒、逆エビ固め)垣原賢人=1敗1分け=●

〇バート・ベイル=4勝3敗=(8分59秒、裸絞め)宮戸成夫=9勝13敗2分け=●

〇鈴木みのる=5勝11敗3分け=(9分58秒、足首固め)中野龍雄=8勝15敗1分け=●

〇安生洋二=11勝13敗3分け=(13分12秒、裏十字固め)ジョニー・バレット●=6敗=

〇前田日明=25勝3敗=(10分35秒、飛びつき逆十字固め)高田延彦=17勝9敗=●

〇船木誠勝=7勝6敗=(14分47秒、KO)藤原喜明=14勝5敗=●

 ◆「U.W.F. ATLANTIS」(1990年10月25日・大阪城ホール)

 ▽15分1本勝負

〇垣原賢人=1勝1敗1分け=(10分43秒、裸絞め)冨宅祐輔=1勝1敗1分け=●

 ▽45分1本勝負

〇鈴木みのる=6勝11敗3分け=(11分20秒、ヒールホールド)宮戸成夫=9勝14敗2分け=●

〇中野龍雄=9勝15敗1分け=(4分45秒、KO)ウエリントン・ウイルキンスJr.=1敗=●

〇ウェイン・シャムロック=1勝=(11分39秒、裸絞め)安生洋二=11勝14敗3分け=●

〇高田延彦=18勝9敗=(23分36秒、TKO)藤原喜明=14勝6敗=●

〇前田日明=26勝3敗=(16分59秒、裸絞め)船木誠勝=7勝7敗=●

 ◆「U.W.F. ENERGY」(1990年12月1日・松本運動公園総合体育館)

 ▽15分1本勝負

〇田村潔司=1勝5敗=(14分58秒、TKO)垣原賢人=1勝2敗1分け=●

 ▽45分1本勝負

〇安生洋二=12勝14敗3分け=(24分16秒、TKO)鈴木みのる=6勝12敗3分け=●

〇バート・ベイル=5勝3敗=(10分53秒、逆片エビ固め)山崎一夫=15勝12敗=●

〇藤原喜明=15勝6敗=(11分11秒、アキレス腱固め)宮戸優光=9勝15敗2分け=●

〇高田延彦=19勝9敗=(18分49秒、腕ひしぎ逆十字固め)中野龍雄=9勝16敗1分け=●

〇船木誠勝=8勝7敗=(18分3秒、逆エビ固め)ウェイン・シャムロック=1勝1敗=●

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