私は事実上の“出勤停止”となってしまった。
昨年11~12月にカタールW杯の長期取材があったのだが、弊社は大変ホワイトな企業なので、所定の年間休日数は必ず確保しなければならない。ということで、休日をまとめて取ることになった。繰り返すが、弊社は大変ホワイトな企業だからだ。
ピンチはチャンス。かねて興味のあったギリシャサッカーを堪能するため、今年1月下旬、ギリシャ・アテネへと飛んだ。
ギリシャ・スーパーリーグの名門対決「パナシナイコス|PAOK」を観戦した。ホーム・パナシナイコスにはかつてアテネ五輪代表のMF梶山陽平が在籍。アウェーのPAOKは、MF香川真司も所属していたクラブだ。
出発前にオンラインでチケットを買おうとしたのだが、いわゆる“瞬殺”で売り切れたため購入できず。狙うは当日券のみ。不安8割、何だかんだ観られるでしょ2割、の心持ちでスタジアムへ。
しかし「あのドキドキを返して」と叫びたくなるほど簡単に、あっけなく当日券が購入できた。あの“瞬殺”は何だったのだろう。
ただし、暴動防止策の1つとして、チケットは氏名印字式。外国人はパスポートを提示する必要があり、チケットには観戦者の氏名が印字される。
スタジアムに入る。試合開始2時間前にして、サポーターは既に戦闘モードで熱唱中。気合いが入っている。
スタジアムの「売り子さん」。おじいちゃんだが、商魂すさまじく、営業トークを繰り広げながらスタンドを駆け回る。段ボールむき出しなところが、ギリシャらしい。
キックオフ直前、重大なことに気づく。このスタジアム、アウェーサポーターがいない…!調べたところによると、安全上の観点から、ホームサポーターのみ入場可だという。暴動を未然に防ぐため、だそうだ。この時点で“無法地帯”ぶりをひしひしと感じたが、この感情は後にもっと大きなものになっていく。
キックオフ。とにかく熱い。発煙筒モクモク、爆竹バンバン。是非は置いといて、リーグとして許可されている(黙認されている)。
チケットがあるのかないのか定かではないが、最前列のさらに前、手すりに座って観戦するサポーター。
ショッキングな事実を知る。写真をよく見ると…。選手の左腕に、緑の光が確認できる。なんと、レーザーポインターによる相手選手への妨害が容認(黙認)されているのだ。スローインを投げる選手、セットプレーを蹴る選手、決定機を迎えた選手…。アウェーチームの選手の目は容赦なくライトアップされ、視界が妨害される。こんなことをしてるからこの国のサッカーは低迷しているのだ、と思わないでもない。
試合は思わぬ展開に。妨害行為にめげず、首位のパナシナイコスを相手にアウェーのPAOKが3点を先行。サポーターの機嫌がどんどん悪くなる。
仲間内でケンカが勃発したり、副審にツバをはきかける愚か者が現れたり、とりあえずPAOKの悪態チャントを歌ってお茶を濁そうとする小心者が現れたり…。カオスと化す。
試合終了。パナシナイコス0ー3PARK。上位対決が思わぬ結果で決着した。
* * *
独特なサッカー文化を持つ国だ。発煙筒やレーザーポインターなど、世界的に禁止されていることが、「アウェーサポーター入場禁止」というルールがあるために、「ホームでやり返すからOK、ホームでは覚悟しとけよ」という名目のもと、認められている。
とてもじゃないが、家族を連れて行ける環境ではない。こういう国に行くと、つくづくJリーグって素晴らしいな、と思う。
とはいえ、異文化を肌で感じ、学ぶいい機会となった。何度も繰り返すが、弊社は大変ホワイトな企業なので、タイミングを見計らってまとまった休みを取得し、海外サッカーを観に行こうと思う。今のところ、候補はモロッコ、チェコ、チリあたり。乞うご期待。
◆岡島 智哉(おかじま・ともや) 2016年、報知新聞社入社。ギリシャが46か国目の渡航国。横浜FM、鹿島、名古屋を担当し、今季は川崎と柏を担当。ギリシャのオススメ観光地はアテネのパルテノン神殿。結構登るので、滑らないスニーカーがオススメ。神殿近くで明らかに詐欺をふっかけてきたおじさんをかわしたあと、なぜか急に打ち解けて意気投合し、帰国後もSNSで交流を深めている。ツイッターアカウントは(@OJ_Hochi)