◆第95回センバツ高校野球大会最終日 ▽決勝 山梨学院7―3報徳学園(1日・甲子園)
山梨学院が報徳学園(兵庫)を7―3で破り、山梨県勢として甲子園初優勝に輝いた。2点を追う5回、打者一巡の猛攻で一挙7点のビッグイニング。鮮やかに逆転勝ちした。6試合連続で先発したエース・林謙吾(3年)がセンバツ史上最多の6勝を挙げ、3失点完投。今大会で696球を投げ抜いた。
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696球を投げ抜いた。エース・林が、マウンドで捕手の佐仲大輝と抱き合った。「やったなという感じ。すごくうれしかったです」。開幕戦の最初の1球を投じた右腕が、最後の打者を中飛に仕留め、センバツを締めくくった。36校が参加した記念大会。4度の完投を含む史上最多の6勝で、優勝投手になった。
142球を要した準決勝の広陵戦からの連投。「疲れは特になかった」。4回に2点を先取されたが、そこから成長した姿を見せた。「調子が良くても悪くても、任された試合で勝てるように一生懸命投げる」。大会前の練習試合で思うような投球ができず、首をかしげるなどの態度を見せた時、吉田健人部長に叱責されて学んだエースの心得だ。表情を変えず、冷静に後続を断った。球数制限で上限160球だったが、118球でまとめた。「明日、試合があったら?」と水を向けられても「投げられます」と涼しい顔だった。
最速は140キロ。それでも、小さなテイクバックで体を開かずシンプルに真上から投じる林の直球は打者のバットに差し込む。吉田部長は、その理由に〈1〉回転数の多さ〈2〉初速と終速の差がない〈3〉打者から腕が見えにくいフォーム…の3点を挙げた。強打の報徳を単打6本に抑え、フライアウトは10個に上った。
初めて背番号「1」で臨んだ昨秋の明治神宮大会は1回戦負け。強い直球を身につけるため食トレによる肉体改造に励んだ結果、体重が78キロから85キロに増えた。「体ができて楽に投げられるようになり、疲労も感じなくなりました」と、スタミナ面の効果も実感している。「自分で納得して定めた目標には努力を惜しまない子」と父の永浩さん(48)は言った。「チームは日本一になりましたが、投手としては上には上がいます」と林。山梨に帰ってやりたいことは?の問いに、真っすぐ前を見て「野球です」と答えた。(浜木 俊介)
◆林 謙吾(はやし・けんご)2005年7月30日、東京都出身。17歳。小学生時は舎人スポーツ少年団に所属。投手と内野手を兼ね、ジャイアンツジュニアに選ばれる。駿台学園中では全国中学校軟式野球大会4強。山梨学院では昨秋から投手に専念し、県大会が背番号「20」、関東大会が「10」、明治神宮大会から「1」。178センチ、85キロ。右投右打。