◆JERAセ・リーグ ヤクルト4―0広島(31日・神宮)
ヤクルトの村上宗隆内野手(23)が広島との開幕戦の初回、今季初打席で決勝の1号2ランを放った。開幕戦での一発はプロ6年目で初。侍ジャパンで世界一に輝いた勢いそのままにシーズンに突入した。たくましさを増した昨季の3冠王が、球団初の3連覇へ、そして2年連続の3冠王へ突き進む。
右手人さし指を立て、場内の歓声を一身に浴びた。国際舞台を経てスケールアップした村上が、今季初打席でシーズン1号を放ち、最高のスタートを切った。初回2死二塁。WBC時よりグリップを高めに構えたフォームで大瀬良の低めカーブをすくい上げ、中堅左へ運んだ。23年セ・リーグ1号の先制2ランは、昨季の日本選手最多となる56号から“2打席連発”。「WBCの勢いで試合に入ることができた。練習で試行錯誤しながらやっていることが結果として出た」と力強くうなずいた。
開幕戦の一発はプロ6年目で初。20年、21年には開幕2戦目に1号を放ったが、開幕戦は過去4年で打率1割8分8厘、0本塁打、3打点と結果を出せていなかった。だが、この日は試合前の打撃練習で34スイング12本のサク越え。「いつもスタートダッシュはいい方じゃない。1打席目で1本打てたので、あしたからたくさんホームランを打っていきたい」と弾みをつけた。
3冠王を獲得した翌年の開幕戦で本塁打を放ったのは、1985年に3冠王に輝いた落合博満(ロッテ)以来2人目。落合氏はその86年に2年連続3冠王を達成した。昨シーズン終了後、「2年連続3冠王を取れるように」と宣言していた村上にとって“吉兆”の一発となった。
仲間の声援が力になった。WBC1次ラウンドは打率1割4分3厘と低迷したが、米マイアミで行われた準決勝のメキシコ戦では逆転サヨナラ二塁打を放ち、復活を遂げた。神宮のロッカールームでは、師匠と仰ぐ青木や同い年の丸山和らが大盛り上がり。その様子を動画に収めた田口が村上に送信すると、マイアミにいた村上は目頭を熱くした。「すごい感動して、泣いちゃいました。本当です」。米国と日本。遠く離れていても、心は一番近くにある仲間の存在がうれしかった。
凱旋し、チームに合流した28日。大好きな仲間に呼びかけた。「もう一回、最高の景色を見ましょう!」。桜が満開の神宮で開幕した23年は、球団初の3連覇と日本一奪還を狙う。一段とたくましくなった背番号55が、豪快なアーチで挑戦のスタートを告げた。(森下 知玲)