31日の金曜ロードショー(後9時)は、「プーと大人になった僕」(2018年)を、放送枠を15分拡大し地上波初、本編ノーカットで放送。ディズニーの誰もが知っているキャラクター「くまのプーさん」を実写映画化、「トレインスポッティング」「スター・ウォーズ」シリーズなどで知られるユアン・マクレガーが主演している。
先週の「ピーターラビット2/バーナバスの誘惑」で、絵本の続編を断られた出版社の社長が「次は『くまのプーさん』だ!」と叫んだセリフを覚えている視聴者もいるかもしれない。その言葉通り、翌週に「プー―」が登場。「ピーター―」はソニー・ピクチャーズ、「プー―」はディズニーと配給会社が異なるものの、”続編”のようになっているのは、金ローのラインアップ担当者のセンスを感じさせる。
物語は主人公・ロビンの少年時代から始まる。実家近くの森でプーら友人と仲良く遊んでいたロビンは、やがて大人になりロンドンのかばん会社に勤務。日々、多忙な生活を送っていた。そんなある日、ロビンの元にプーが突然現れる。
「森からいなくなった仲間たちを一緒に探してほしい」と助けを求めるプーと森に戻り、友人と再会したことで懐かしさを覚えたロビンだったが、仕事が気になりロンドンへ引き返すことに。だが、森に重要な書類を置いていってしまう。それを見付けたプーと仲間たちはロビンを助けるためにロンドンへ向かう―。
「人間にとって、本当に大切なものは何なのか?」を問う、極めてオーソドックスな内容。演出にも奇をてらったものはほぼなく、ハッピーエンドが待ち構えていることも途中から予想できる(ディズニー映画だから、ある意味当然かもしれないが)。ただ、逆にそれが”安心”して見られることにつながるかもしれない。
ロビンの吹き替えを務めた俳優・堺雅人は公開当時、アフレコ台本に長男がクレヨンで落書きをしたエピソードを明かし「いつもだと怒ってしまうと思うんですが、今回むしろうれしかった。ちょっと変わったのかもしれません」とコメント。家族を顧みずに仕事に没頭していた父親が、プーとの再会を経て自らの人生を見直していくストーリーに影響を受けたのかもしれない。
本作のメガホンを執ったマーク・フォースター監督は現在、「オットーという男」が劇場公開中。名優トム・ハンクス演じる妻を亡くし、希望を無くしたことで孤独の中に生きる偏屈な男・オットーが、越してきた隣人の女性の影響で再生していく様子をコメディータッチで描いた同作も、「何も事件が起こらない」中でオットーが変化していく過程を繊細に描いている。
人気スパイ映画シリーズ「007 慰めの報酬」(08年、日本公開は09年)や、ブラッド・ピットがゾンビと戦う「ワールド・ウォーZ」(13年)など、アクション大作も手掛けているフォースター監督だが、記者は人間の内面を映像に焼き付ける方を得意としていると思う。「プー―」はその真骨頂とも言える作品だろう。(高柳 哲人)
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