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【ヒルマニア】WBC優勝! 日本球界の夢が実現 そして、紛争のない幸せを噛みしめながら野球を見守っていこう 

スポーツ報知
優勝トロフィーを掲げる大谷翔平(中)と侍ジャパン(カメラ・岩田 大補)

 日本が3大会、14年ぶりのワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の優勝を果たした。メジャーを代表する選手になったエンゼルス・大谷翔平を始めとした侍ジャパン30人のプレーぶりだけでなく、栗山英樹監督を中心にしたスタッフの献身ぶりも素晴らしく、チーム「侍ジャパン」の勝利でもあった。日本人メジャーや日系のヌートバーが加わっていた事実も踏まえ、改めて敬意を表したい。

 第1回がキューバ、第2回が韓国を決勝で倒しての優勝だったが、やはり米国をファイナルで倒した点、メジャーのスター選手が並ぶ相手を打ち破ったのは感慨深い。1936年職業野球連盟として正式に発足した現在のプロ野球には3つの大きなスローガン(綱領)があった。

〈1〉我ガ連盟ハ野球ノ真精神ヲ発揮シ以テ国民精神ノ健全ナル発達ニ協力セン事ヲ期ス

〈2〉我ガ連盟ハ「フェア・プレイ」ノ精神を遵守シ模範的試合の挙行ヲ期ス

〈3〉我ガ連盟ハ日本野球ノ健全且飛躍的発達ヲ期シ以テ野球世界選手権ノ獲得ヲ期ス(原文のママ)

 

 とある。つまり発足当初から世界選手権、つまり打倒大リーグを目標に掲げていたのだ。世界選手権とはいかないまでも、米国を決勝で破ったことで、当時この綱領を作った先人たちも喜んでいるのではなかろうか。

 もっとも、それは長い道のりだった。今大会の準決勝、決勝で4番吉田正尚(レッドソックス)、5番村上宗隆(ヤクルト)、6番岡本和真(巨人)が豪快な一発をローンデポ・パークに叩き込んだが、1934年全米チームを率いたコニー・マック総監督は「守りから始める日本野球。点を取らなくてはならないのがベースボールなのに」と日本チームの非力なバッティングを指摘していた。

 1934年の日米野球でベーブ・ルースら一行が来日し、全日本相手の15戦全勝(他に東京倶楽部1試合、日米混成試合2試合)した際には全米が47本塁打したのに日本は3本。日米野球では1955年ヤンキース31本に対し日本チーム4本。通算868本塁打の王貞治が2年連続三冠王になった1974年メッツ相手でも王が一人で6本打つも日本は12本でメッツは28本。若手選手で構成され侍ジャパンに1勝5敗だった2018年も本塁打だけは4本対10本と米国に圧倒されていた。それだけにパワーでも負けないところを見せた3本のホームランは胸が震えた。 

 しかし、この長い道のり。もし大平洋戦争がなかったら、もう少し早く成就していたかもしれない。東京ドーム敷地内には、戦没したプロ野球選手を祀った「鎮魂の碑」がある。プロ野球創設時に活躍した沢村栄治、景浦将も刻まれている。彼らも戦争がない時代に生まれていれば、よりパワーを秘めた選手に成長していった可能性は高い。

 ウクライナ紛争が続き、当地のスポーツ選手も戦場に駆り出されている。それを考えればWBCのような国際大会が開かれた幸せを感じずにはいられない。それとともに戦火のない世界になって欲しい。

 もうすぐ、米大リーグを始め日本プロ野球も開幕する。そんな思いも感じながら、今年もペナントレースを見まもっていこう。

 蛭間 豊章(ベースボール・アナリスト)

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