嵐の松本潤が江戸幕府初代将軍・徳川家康を演じるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜・後8時)の第12回「氏真」(26日放送)で、家康が今川氏真(溝端淳平)と直接対決する。
父・今川義元(野村萬斎)の亡き後、甲斐の武田信玄(阿部寛)と家康の二手から攻められることになった氏真。駿河の今川館を捨てて掛川城に落ち延びる。掛川は徳川領のすぐ近く。家康にとって氏真は、今川家の人質だった頃、兄弟のように育った仲。刀を交える際のやり取りが注目される。
歴史を学ぶ上では、父の持っていた力を継承しきれず、決して名君として扱われない氏真。今作ではイケメン溝端が激しい喜怒哀楽をたっぷりと演じ、人間味あふれる役になっている。歴史は勝者が残してきたストーリー。主君・今川家を裏切った格好になった家康の周囲が、後年になって氏真を愚かな人物像に仕立てあげた可能性もある。実際の氏真はどんな武将だったのか。脚本・古沢良太氏の解釈を待ちたい。
前週第11回「信玄との密約」(19日放送)では家康と信玄が接触した。信玄は、会談の場に自分が欠席すると見せかけて家康を怒らせ、家康が屋外に出てきた場所に現れた。さらに、外で栗を見つけた家康が、栗好きな妻・瀬名(有村架純)のために持ち帰ろうと考案。拾うと既に中身が抜かれており、信玄が手土産として持っていた。
家康のことは性格から妻の好物まで全て把握しているということを、無言で示した信玄。そして今川領の分け方を決める際は「駿河からは我らが、遠江からはそなたが…」と言った後、団子を取り出し家康の口にペチッと押しつけ、家康も困惑の表情に。言動で家康を圧倒した。後になって、信玄に戦で敗れた家康が、恐怖のあまりに馬上で脱ぷんするという逸話があるが、それもうなずける描写。SNSでも「家康と同じで固まった。怖いよ~」。映画「テルマエ・ロマエ」でイタリア人を演じた濃厚なビジュアルの阿部だけに「圧倒的にテルマエ阿部信玄が超怖ぇ~」と恐怖のツイートが続いた。
悲しい別れもあった。瀬名の親友で、亡き今川家臣の飯尾連龍(渡部豪太)の妻・田鶴(関水渚)。夫の後を継いで城主となっていた。断髪して美しい鎧(よろい)姿。馬に乗って家康軍に突撃するも、あえなく討ち死にした。ネット上では「涙無くして見られない」「お田鶴の方の『かかれー!』で涙がぶわっとあふれました」と悲しみの声が相次いだ。
前週の平均世帯視聴率は10・9%。WBCのあおりで一桁に落ち込んだ前々週から持ち直した。ライバルのテレビ朝日系「ポツンと一軒家」が休みだったこともあり、時間帯トップに返り咲いた。ダメダメ感が抜けない家康に対し、牙(きば)をむき始めた戦国オールスターズ。いつ来るか分からない家康の覚醒を待ちたい。
(NHK担当・浦本将樹)
※視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区