◆第95回センバツ高校野球大会第5日▽2回戦 東海大菅生5―2城東(22日・甲子園)
21世紀枠の城東(徳島)が東海大菅生(東京)を相手に大善戦した。
永野悠菜マネジャー(3年)が試合前のノックで甲子園初の“女子ノッカー”となったことが話題になった。だが、試合も見せ場たっぷり。ノックの成功で盛り上がった効果もあったか、ナインは果敢に強豪を攻め立てた。
初回、二盗をきっかけにチャンスを作り、二ゴロで1点を先取した。その裏に追いつかれたが、2回は犠打などで1死一、三塁とし、スリーバントのセフティースクイズを成功。相手先発を2回でマウンドから引きずり下ろした。
学校のグラウンドが狭く、普段は内野部分でしか練習ができないため、選手たちが練習メニューを考案する。その一つがバントだけで攻撃する「バントゲーム」。磨いてきた機動力や小技を、初の甲子園で披露した。
永野マネジャーがノックした内野陣も再三の堅守で応えた。3回、逆転された後の2死一、二塁で、一、二塁間寄りよりのゴロを一塁手・来福奏登から投手・岡一成への連係プレーでアウトに。7回2死二塁では遊撃手・吉田優が三遊間の深いゴロをさばき、追加点を阻止。3失策を記録したが、捕球ミスはイレギュラーバウンドした5回の一ゴロ失策だけ。8回に2つの送球エラーで3点差になるダメ押し点を献上したものの、それまではほぼ互角の戦いだった。
県屈指の進学校で、野球部員は男子12人、女子マネジャー1人の計13人だけ。それでも、昨秋の徳島大会4位。昨夏も県ベスト4だった。練習でノックをするマネジャーなど少人数での健闘が認められて、21世紀枠で選出されたが、その実力はホンモノだった。新治良佑監督(35)は「やれることをしっかりしような、と言っていた。それを初回から9回まで、よく表現してくれた」と選手をねぎらった。
学校創立は1902年の伝統校。しかし、グラウンドの狭さなどが理由で、長い間、野球部は軟式しかなかった。硬式野球部の創部は1996年。数人の生徒たちが、甲子園を目指して野球をやりたい、と学校側に訴えかけたことから始まった。その甲子園への夢を切り開いた野球部1期生たちも、春夏通じて初出場の聖地に駆けつけた。WBC決勝と重なったこともあってか、観衆は9000人と少なかったが、一塁側アルプス席はギッシリ。得点が入ると阿波踊りの応援で盛り上がった。
ベンチで笑顔を絶やさなかった永野マネジャーは「みんなが輝いて、楽しそうにプレーしていた」と甲子園のすばらしさを堪能。新治監督は「13人でも甲子園で頑張れることを示せた。ハンデをマイナスに捉えずに前向きに取り組んでいたら、こういったご褒美が待っているんだということを、全国の人にちょっとでも伝えられたらうれしい」と健闘したナインを誇った。