◆第95回センバツ高校野球大会第5日▽2回戦 東海大菅生5―2城東(22日・甲子園)
甲子園のグラウンドで、女子ノッカーが誕生した。第3試合で城東(徳島)・永野悠菜マネジャー(3年)が試合前にノック。第1試合の光(山口)・西原さくらマネジャー(3年)がノッカーにボールを手渡す役目を果たしたのに続き、女子マネジャーが“活躍”した。
侍ジャパンVから約2時間後、甲子園でも歴史の扉が開いた。午後1時50分、城東・永野マネジャーが三塁、遊撃…と内野ノック。「選手が『頑張って』と励ましてくれて、1本打った後に森本(凱斗捕手)が『いいよ』って言ってくれて、安心してノックできました」。大役が決まってから新調したユニホーム姿で約1分半、17本のノックを打つと、スタンドから「格好いい」という声も飛んだ。その後は新治良佑監督(35)にボールを渡す係に回り、ノック終了後にベンチに戻る時は、緊張から解放されて笑顔がはじけた。
「練習でもっとできる時もあったので100点じゃないけど、楽しかったので100点です」
県下屈指の進学校ということもあり、部員が少ない。昨年の春、練習の助けになれば、と自発的にノックの練習を始めた。中学時代はオーケストラ部。運動経験はほとんどなし。最初は空振りの方が多かった。だが、手にマメができるほど努力し、昨秋からノックで練習に参加。その頑張りが21世紀枠での選出の理由の一つになり、今大会でのノックが認められた。
世間の批判的な声も耳に入った。新治監督によれば「とくにこの2週間ぐらいは、(甲子園の)歴史の中で大きなことに挑むというプレッシャーに押しつぶされそうになっていた」といい「苦しくなります」と漏らしていたという。だが、ナインや周囲らの応援を励みにして、これまで以上に特訓。晴れ舞台で見事なノックを打ち、新治監督は「いろいろな考え方があると思いますけど、21世紀枠で選んでもらって、表現する場所がもらえたのはすごく大きかった」と感謝した。
「マネジャーというポジションはなかなか評価されにくいけど、いろんな方に知っていただけた」。選手12人プラス1で挑んだ同校初の甲子園。磨いてきた機動力も発揮し、初回、2回に1点を奪い、強豪の東海大菅生をリードした。3回に逆転され、善戦は及ばなかったが、ベンチで笑顔を絶やさなかった永野さんは「みんなが輝いていた」とナインをたたえた。その永野さん自身も輝いていた一人。初の女子ノッカーは、男子選手と一緒に戦えることを証明した。(井之川 昇平)