放送中のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」(月~土曜・前8時)で、長らく伏せられてきたキャラクター「むっちゃん」が俳優の前原瑞樹(30)であることが16日の放送で明らかになった。前原は「舞いあがれ!」の後を受けスタートする朝ドラ「らんまん」にも出演が決まっている。このほどスポーツ報知の取材に応じた前原は、朝ドラ連続出演に対する思いや俳優として見つめる将来について語った。
「舞いあがれ!」はヒロイン・舞(福原遥)が暮らす東大阪市と、幼少期を過ごした長崎・五島が舞台。前原演じる「むっちゃん」は、五島でカフェを経営するさくら(長濱ねる)の夫で、放送開始から長らく、さくらのセリフだけで存在がにおわされており、SNS等では「むっちゃん」の正体の考察合戦が飛び交っていた。
長崎出身である前原は、自身の故郷が舞台である「舞いあがれ!」も視聴者として楽しんでいたという。「僕も長崎出身ですが、(出演の)チャンスはなさそうだなとか思っていました。ストーリーで『むっちゃん』の話が出てきた時とかもテレビで見ていた」といい、まさかのむっちゃん役のオファーを驚きを持って受け入れたという。
最初の登場のシーンは、大阪で暮らすことになった舞の祖母・祥子(高畑淳子)を、五島のなじみの仲間が見送る送別パーティーのシーン。「台本上でもすごくサラッとむっちゃんがいるんで、そのサラッと感がすごく面白かったです」。ひとりの視聴者として楽しんで見ていた朝ドラの世界に入り込み「まんま『舞いあがれ!』の世界で。自分が見ていたみんなの中に自分が入るっていうのが、不思議すぎて、ちょっと緊張もしました」
実は、そのシーンを収録する当日の朝の放送で、むっちゃんのイラストが公開され、一気にSNSが盛り上がりモードに入ったという。「むっちゃん問題がザワザワしてるのは把握していたんですけど、撮影行く日の朝、イラストが出たことで爆発的に考察合戦になっていて、震え上がりました…」。長崎で暮らす父にも出演を伝えると「それは大変なことだよ」と驚きながらも、息子の晴れ姿を喜んでくれたそうだ。
撮影中は妻役の長濱とも、出身地の長崎トークを交わすなどして和やかに過ごした。五島でのロケにも参加し「生まれて初めての五島だったのですが目線をさえぎるものが何もなくて、本当に美しい場所でした」と振り返った。
「舞いあがれ!」は来週に最終回を迎えたのち、4月3日より「らんまん」がスタート。前原は同作にも出演が決まっており2作連続での朝ドラ出演を果たす。日本の植物学の父、牧野富太郎をモデルにした作品。前原は神木隆之介演じる主人公・万太郎が植物学を学ぶために出入りを許される東京大学の植物学研究室の学生・藤丸次郎を演じる。
「ウサギとキノコが好きな研究者の役です。まだ撮影が始まったばかりなんですけど、穏やかで優しい男の子ですね」。繋がった眉毛もチャームポイントといい「衣装合わせのときに、メイクさんが『眉毛繋げちゃおうか』って言って、すごく上手に毛を貼り付けていってくれて。自分も眉頭が結構しっかりしてる方なので、いま絶賛生やし中なんです」と笑みをみせる。
神木との共演シーンもあり「神木さんは本当に覚えるセリフ量が半端じゃないので、邪魔できないなと思って、もう横で見守ってますね」とその集中力に圧倒される日々だ。「ひとりで台本を読んでいて『神木さんがやったらすごくまっすぐいいシーンになるだろうな。15分幸せになれるだろうな』と思っていたものを、その通りに現場で見せてもらえる実感があります」と温かい雰囲気が流れる作品になっているようだ。
「舞いあがれ!」も「らんまん」も、オーディションではなく、過去に前原が出演した作品が縁となり出演オファーを受け取った形。「本当にご縁というか『前原くんはどうかな』と思い出してもらえるようなことが、すごくうれしいなと思います」と語る。
ちょうど初舞台から10年になる。「小さいころから、両親がよく演劇を見に行ってくれていて。中高は吹奏楽でトランペットをやっていたのですが、そのときの先生が『表現することを続けていってほしい』と言ってくれて。高2の終わりぐらいから俳優業を志しました」
大学進学を機に上京し、学生生活と並行し「映画美学校」のアクターズ・コースで演技を学び、13年の3月に初舞台を踏んだ。「今もそうなんですけど、お芝居はずっと楽しくて。『面白い顔だね』とか言ってくれる人たちがいて、ここまで続けてこられているんだと思います」
映画美学校時代に、俳優の古舘寛治や劇作家の平田オリザ氏らと知り合い、劇団「青年団」に入団。「なんてクールな劇なんだとしびれてしまって。この中に混ざってみたいって。入団してからは、いろんな作品で経験を積ませていただきました」。俳優業では、“また会いたい人になる”ことが目標。「声をかけてもらえる存在でずっといたいなって。舞台、ドラマ、映画とジャンルは関係なく呼んでいただいたところで休みなくやっていけたらいいなと思います。『舞いあがれ!』にも出られている古舘さんは学生のころから師匠だと思っているんですが、実は共演したことがないので、同じシーンで掛け合いができたら」と夢を語った。
◆前原 瑞樹(まえはら・みずき)1992年10月5日、長崎県生まれ。大学で演劇学を専攻し、在学中に「青年団」に所属。舞台、映画、ドラマ、CMなどで活躍。19年の映画「アボカドの固さ」は自身の体験がベースの作品で、本人役で主演。最近の出演作に20年NHK「伝説のお母さん」、22年テレビ朝日系「ザ・トラベルナース」など。カールがかかったヘアスタイルは地毛。大の中日ファンとして知られる。