「記憶にございません」はキングオブごまかし…藤井青銅著「国会話法の正体 政界に巣くう怪しいレトリック」

スポーツ報知
構文解析を取り入れ、著書を執筆した藤井青銅氏

 脚本家や放送作家として活躍する藤井青銅さん(67)は、著書「国会話法の正体 政界に巣くう怪しいレトリック」(柏書房、1870円)で政治家や官僚の国会答弁に潜む「ごまかしテクニック」を徹底解析している。藤井さんは「(政治家の発言に)なぜイライラしているのか分からなかったが、書きながら原因に気づいた」と話し、その“正体”を明かした。(坂口 愛澄)

 藤井氏は、「構文解析」を取り入れた斬新な方法で執筆を進めた。

 「ニュースなどで政治家の発言が批判されているのは何度も見てきましたが、構文解析を使って説明するのは今までにないと思ったんです。誤解を招いたとしたらとか、検討を加速するといった発言になぜ自分がイライラしているのか分からなくてモヤモヤしていたんですが、書きながら原因に気づくことができました」

 その原因とは、発言に誠意がないこと。不祥事などで事実関係を追及され、「記憶にございません」という発言をよく耳にするが、藤井氏はこれを「キングオブごまかし」と表現した。

 「写真だったり証拠があるのに、『記憶にございません』と発することで、当人の記憶のあるなしに焦点が当たってしまい、術中にはまっている感じがしますよね。『またかよ』とか『どうせうやむやにするんだろ』と思われることを分かっているにもかかわらず、言っているとすれば悪質ですよね。普通だったら公で言えない。夫婦げんかでこんなこと言えば、火に油を注ぐようなものですよ(笑い)」

 ツイッターなどSNSが発達したことで、誰もが意見を発信することが可能な時代になった。藤井氏は「文句はもっと声を上げたほうがいい」と持論を述べた。

 「やっぱり政治家や権力者は世間の声を気にするし、恐れていると思うんですよね。得票数の結果で政治家になっているわけですし、数のまとまりには潜在的に敏感なはず。『しょせん、ネットの意見なんて…』という人がいますが、人々が群れて反抗するというのは怖いと思います」

 選挙へ行かない人々が「どうせ私の一票なんかで、世の中は変わらない」と言うのをよく耳にするが、このフレーズは「用意された言い訳だと気づいてほしい」と呼び掛けた。

 「自分の頭で考えて、発言しているような気がするけど、結局この言葉を言えば何もしなくていいってことにつながってしまうんですよ。世界情勢も変化し、不満を持っている人ってたくさんいる。『政治を勉強せずに語るな』という人もいますけど、別に思ったことを言うのはいいと思うんです。だってサッカーを見ながら皆、それぞれの意見を言いますよね? それと一緒なんですよ」

 野球やサッカーなどでは、視聴者向けにスポーツ実況が行われるのが一般的。国会中継を初めて見る人にも分かりやすく伝えるために、藤井氏は実況を取り入れることを提案した。

 「国会中継の実況は、ずっと絶対面白いコンテンツにできると思っていたんです。予算委員会で議員の後ろから助言しているのは誰なんだろうとか、何省なのかなと疑問に思っている視聴者は実際に多いと思います。スポーツは動きに言葉をかぶせることができますが、国会中継だと言葉に言葉がかぶってしまうので現実的には難しい。ですが、発言していない間に『質疑者は(県名)〇区の〇氏です』と声を吹き込むだけで違うと思うんですよね。(マラソンや駅伝の)増田明美さんのように一言、解説を入れるだけでいいんです」

 政治家が自分の発言を釈明した際、藤井氏が構文解析図をツイッターに投稿すると、「こういう考え方をするなんて鋭い」「視点を変えると面白い」といった声が寄せられるという。

 「すごくたくさんの方が反応してくれていて。コメントを読んで、皆も同じことを思っていたんだなと実感しますね。著書のタイトルだけを見ると、難しい話と思う方もいるかもしれませんが、笑えますし、笑いながら怒りたくなると思いますよ」

 ◆藤井 青銅(ふじい・せいどう)1955年10月20日、山口県生まれ。67歳。79年「第一回星新一ショートショートコンテスト」で入選。作家兼脚本家・放送作家として、「オールナイトニッポン・スペシャル」「NHKFM青春アドベンチャー」などを担当。腹話術師いっこく堂の脚本・演出を担当し、デビューもプロデュースした。

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