藤井聡太竜王、最年少六冠 羽生超え20歳8か月&羽生以来2人目快挙…実力は「まだまだ」

スポーツ報知
棋王戦に勝ち、六冠を達成した藤井聡太竜王。名産のいちごを手に笑顔。(カメラ・瀬戸 花音)

 将棋の渡辺明棋王(38)=名人=に藤井聡太五冠(20)=竜王、王位、叡王、王将、棋聖=が挑戦した第48期棋王戦五番勝負第4局が19日、栃木県日光市の「日光きぬ川スパホテル三日月」で指され、後手の藤井が132手で勝ち、3勝1敗で棋王位を初獲得した。六冠は羽生善治九段に次ぐ史上2人目の偉業で、20歳8か月での達成は史上最年少記録。今年中の八大タイトル全冠制覇が、いよいよ現実味を帯びてきた。

 将棋の神様は、静かに藤井にほほ笑んだ。「まだまだ実力的には足りないところが多いと思うので、立場にふさわしい将棋が指せるように一層がんばらなくてはならない」。六冠を達成した終局後、「将棋の申し子」から出た「立場」という言葉には、謙虚な中にもいつもとは違う覚悟がにじんでいた。

 戦型は4局連続で角換わりに。序盤から速いペースで進み、中盤からは渡辺が桂馬を果敢に使った気迫の攻めを見せた。終盤は、5筋の戦いから渡辺が藤井の玉周りを攻め続けていたが、藤井は桂馬を使って逆襲に出ると、最後は守りの薄い渡辺玉をきれいに寄せ切った。「判断が難しい局面が多い一局だった」。マスクもなく、遮るものがない藤井の口は酸素を求め、開いたままだった。

 棋王戦はこれまで“鬼門”だった。17年、中学3年生の時に挑んだ第43期は予選は突破したものの、挑戦者決定トーナメント(T)で初戦負け。続く44期も同じく初戦負けを喫し、45、46期は予選も突破できず。47期は挑戦者決定T3回戦で敗退。6回目の挑戦で初めて進んだ番勝負で、令和の絶対王者は、「なんとかいい結果を出せて良かった」と安どの表情を見せた。

 昨年2月、渡辺相手にストレートで王将位をもぎ取り、史上最年少五冠になってから1年で手にした六冠目。これまで六冠を達成したのは、羽生のみ。最年少であり唯一だった24歳2か月という記録も28年3か月ぶりに更新した。タイトル獲得13期は、佐藤康光九段に並ぶ歴代7位タイ。13回登場していまだ敗退知らずと圧倒的強さを見せている。

 休む間もなく、4月5日からは史上最年少名人をかけた渡辺との名人戦七番勝負が始まる。名人を奪取し、他のタイトルを全て防衛した上で、例年9月に始まる王座戦五番勝負でタイトルを奪えば、八冠全冠制覇が実現する。

 「乗り鉄」として知られる藤井。自分の現在地を、地元名古屋から東京までの新幹線こだまの道のりで例えた。「タイトルを増やすことはできてはいるが、あまり(ゴールに)近づけている感覚はないので…静岡くらい」。棋界の第一人者は、まだ見えぬ終着駅への期待を胸に、強さを追い求めていく。(瀬戸 花音)

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