◆大相撲 ▽春場所8日目(19日、大阪・エディオンアリーナ大阪)
西前頭5枚目・翠富士が自身初のストレート給金を決め、単独トップの座を堅持した。東同9枚目・碧山を寄り切り。横綱、大関が昭和以降初めて不在となる異常事態の中、幕内で一番の小兵が大きな存在感を放っている。静岡県出身力士初優勝を目指し、さらに勢いに乗っていく。1差の1敗で小結・大栄翔が追い、2敗で小結・琴ノ若、平幕の正代ら、5人が続く。
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幕内で最も小さく、軽い翠富士が、割れんばかりの大喝采を独り占めにした。自身を身長で20センチ、体重は72キロ上回る巨漢・碧山戦。立ち合いで強烈にかち上げられると、顔面に突っ張りを何発も食らった。それでも一切ひるまずに前へ。狙った肩透かしは不発も、グラついた相手を力いっぱい押し込んだ。自身初のストレート給金。激戦で口の中を切ったが、「勝ったので痛くない。すごくうれしいです」とニッコニコだった。
単独トップを守り、勝負の後半戦に挑む。快進撃の伏兵に、八角理事長(元横綱・北勝海)は「自信を持って相撲を取っている。小さい人は気持ちで負けたら、それで終わりですから」と高評価。浅香山審判長(元大関・魁皇)も「あの体で動いて崩して、前に出ている。見ていて、いつもと違うと感じる」と、目を見張った。
本場所をけん引する重圧は大きく、寝つけない日が続くという。夢では今場所の結末が“判明”。「『どういうこと~』って思うんですけど、千秋楽が10勝3敗でした。2個どっかに消えたっすね」と珍事を報告。「正夢にならないように頑張ります」とはにかんだ。
大関以上が全員不在となる昭和以降初の異常事態だが、賜杯をゲットする絶好のチャンスでもある。幕内最小&軽量の“最小兵力士”は、「このまま単独を守れたらと思います。『小さくても勝てるんだぞ』というところを見せたい」と闘志。静岡県勢初のV力士誕生へ―。笑顔が魅力の小さな巨人が大きな夢をかなえる。(竹内 夏紀)
◆主な小兵力士
▽旭国(大関=174センチ、121キロ) 闘志あふれる取り口で「ピラニア」、理路整然とした取り口の分析から「相撲博士」の異名を取った。大関在位21場所。
▽鷲羽山(関脇=174センチ、110キロ) 小さな体で突き、押し、いなしに足技など、多彩な技で土俵を沸かせ「ちびっ子ギャング」のニックネームもあった。
▽舞の海(小結=170センチ、100キロ) 新弟子検査基準(当時)に足りず、頭にシリコンを入れて合格。技能賞5回など「技のデパート」と呼ばれた。