侍ジャパンのエンゼルス・大谷翔平投手(28)が、米国でも“二刀流”で世界一への原動力となる。18日(日本時間19日)は米フロリダの大学施設で渡米後初の全体練習に参加。20日(同21日)の準決勝・メキシコ戦に向け、先発するエ軍の同僚、P・サンドバル投手(26)の情報を共有するなど、スコアラー役としても動いた。一夜明けた現地時間19日には、決戦の舞台となるローンデポ・パークで初の全体練習を行った。
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マイアミの気候に誘われ、大谷のテンションが上がっていた。村上、ヌートバーのフリー打撃中はケージ後方に待機。スタッフからビデオカメラを借り、自ら撮影して2人の笑顔を引き出した。村上の豪快な打球には「おぉ!」と声を上げ盛り上げた。大勢のブルペン投球もチェック。「勉強になります」といたずらっぽく声をかけるなど、中心選手として決戦前にリラックスムードを作り出した。
“三刀流”でチームに貢献する。準決勝で対戦するメキシコの先発はエンゼルスのチームメート・サンドバルが有力。普段はキャッチボールを行うなど仲が良い左腕だけに、球種や実力はもちろん、軌道など細かい特徴まで熟知している。米国ではスコアラー役も担い、生きた情報を首脳陣やチームメートと共有し、攻略につなげる考えだ。
大谷の前の2番を打つ近藤は「翔平にちょっと聞きました」と切り出し、「左(打者へ)のスライダーと少しチェンジアップ(を使ってくる)というところは話してもらいました」と説明。村上も「少し話はしました」と、すでに「スコアラー・大谷」が動き始めたことを明かした。
練習中、大谷と珍しく多くの会話をした栗山監督も、その情報を頼りにする。内容はぼかしつつ、「しっかり分析して、できる限りのことをやる」。準決勝進出時には「最終的に1点でも多く取っていればいい」と話していた大谷は、貴重な1点を絞り出すべく、やれることは全てやる覚悟だ。
“二刀流明け”の打者・大谷を後押しするデータもある。準々決勝イタリア戦で投打同時出場し、準決勝以降は打者に専念する。昨季、エ軍では28登板。最終戦登板や欠場を除き、27度の登板翌戦では打率2割9分7厘、11本塁打、19打点をマークした。昨季出場した157試合換算では64発ペース。登板当日や登板前と比較して打ちまくった。
シーズンは投手調整が優先。登板当日は打撃練習の時間を減らし、ブルペン投球などを行うルーチンは他の投手と変わらない。登板日が近づくにつれ、相手のデータも頭に入れるため、登板に費やす時間が増える。一方、登板翌戦は打撃に集中することが可能。残り2戦、打撃にフォーカスした背番号16への期待値は高い。
ここまで打率4割3分8厘で、1本塁打、8打点。キャッチボールやティー打撃で調整した18日には、ヌートバー、山本、村上、宮城らと食事し、英気を養った。準々決勝後には「引き続き気を引き締めて頑張ろうと思います」とを改めて気持ちを奮い立たせていた大谷。主砲として、スコアラーとして。米国でも中心となって世界一を奪いにいく。(安藤 宏太)