◆第95回センバツ高校野球大会第1日 ▽1回戦 山梨学院3―1東北(18日・甲子園)
2019年以来4年ぶりに声出し応援が認められ、全出場校が開会式に集う中、春の祭典が開幕。開幕戦では東北(宮城)が、侍ジャパンで注目される“ペッパーミルポーズ”を披露したところ、審判から注意を受け、元巨人内野手の佐藤洋監督(60)が異議を唱える一幕があった。試合は山梨学院、高知、沖縄尚学がそれぞれ初戦を突破した。
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思ってもいなかった“物言い”に、盛り上がっていた東北ベンチが静まった。初回、先頭の金子和志が敵失で出塁。一塁塁上でベンチに向かって、侍ジャパンで定着した“ペッパーミルポーズ”を決めた。しかし、一塁塁審から注意を受けると、ベンチにも「パフォーマンスは駄目です」という趣旨の注意。主将の佐藤響は「注意を受けて、少し嫌な雰囲気になった。自分たちらしいプレーがあそこで途切れてしまった」。その後はパフォーマンスを慎み、試合は1―3で敗れた。
この注意に疑問を呈したのが、かつて巨人でもプレーし昨秋就任した佐藤監督だ。野球を楽しむことを重視するだけに「あれやって怒られましたからね。何でこんなことで、子どもたちが楽しんでいる野球を大人たちが止めるのかなと感じました。もう少し子どもたちが、自由に野球を楽しむことを考えてほしい。日本中が盛り上がっているのに何で駄目なのか、理由が聞きたい」と首をひねった。
日本高野連は「高校野球としては、不要なパフォーマンスやジェスチャーは、従来より慎むようお願いしてきました。試合を楽しみたいという選手の気持ちは理解できますが、プレーで楽しんでほしいというのが当連盟の考え方です」と公式にコメント。ルールではないがマナーの問題とし、大会前には出場校に通達しているという。この日は敵失での出塁だっただけに相手への敬意を欠く行為と取られたのかもしれない。
東北は大会前の練習試合でもこのポーズを取り入れ、指揮官も「一丸となって楽しんでいた」とチームの一体感に手応えを口にしていた。佐藤響主将は「相手を侮辱している行為でもなんでもなく、自分たちが楽しんでいる姿があれなだけ。切り替えて、夏は違う形で楽しめたら」。昨秋の宮城大会では、昨夏全国Vの仙台育英を撃破した伝統校。確かな実力を“エンジョイベースボール”に落とし込み、夏の再訪を誓った。(山口 泰史)
◆フェアプレー精神 日本学生野球憲章の前文では「学生野球は試合を通じてフェアの精神を体得する事、幸運にもおごらず悲運にも屈せぬ明朗強じんな情意を涵養(かんよう)する事、これこそ実にわれらの野球を導く理念」(一部抜粋)と定め、フェアプレーの重要性を説いている。「第1章 総則」の「第2条 学生野球の基本原理」で「学生野球は、友情、連帯そしてフェアプレーの精神を理念とする」としており、派手なガッツポーズには過去に注意がなされた。
◆甲子園で注意されたパフォーマンス 09年センバツでは花巻東・菊池雄星投手(現ブルージェイズ)が派手なガッツポーズを連発し、試合後に注意を受けた。18年夏の甲子園では創志学園の2年生右腕・西純矢投手(現阪神)が派手なガッツポーズを球審に注意された。同年夏の甲子園では金足農・吉田輝星投手(現日本ハム)がマウンドにひざまずき、抜刀する“シャキーン”ポーズで注目を集めたが、準決勝前に大会関係者からの指摘を受け、控えめに行った。