スキージャンプの今季国内最終戦となる伊藤杯大倉山ナイター大会がきょう18日に大倉山ジャンプ競技場(札幌)で行われる。今季限りでの現役引退を発表した10年バンクーバー五輪代表の栃本翔平(33)=雪印メグミルク=は現役ラストジャンプに臨む。17日の公式練習を終え「さみしさが強い。最後は気持ち良く、好きなように飛びたい」と誓った。同じく現役を引退する原田侑武(32)=雪印メグミルク=、伊藤将充(25)=土屋ホーム=も意気込みを口にした。
納得のジャンプで現役生活を締めくくる。引退試合を前に、公式練習に臨んだ栃本は「長くやりすぎて(引退の)実感がわかない。最後は順位にこだわらず、本当に気持ち良く飛びたい」とスッキリと笑った。
9歳で始まったジャンプ人生。道尚志学園高(現・道科学大高)時の07年に世界選手権団体で銅メダルを獲得し、雪印入社後の09年にも同選手権で3位。10年のバンクーバー五輪では団体戦5位と世界でも結果を残してきた。12年の雪印メグミルク杯(宮の森)では104メートルの大飛躍でジャンプ台記録のバッケンレコードを更新。記録はいまだに破られていない。
「ジャンプしかやってこなかった。僕にとってはご飯を食べるような感じ」。18年には椎間板ヘルニアと腰椎分離症も発症したが「乗り越えたって感覚はない」と前だけを向いてきた。だが近年は成績が低迷し「会社判断もあったし、新しい世代の子たちも出てきたので」と引退を決断した。
雪印では主将を務め「チームメートとは家族より一緒にいた。さみしいですね」。口にし続けてきたW杯総合優勝の目標こそかなわなかったが「夢を追うことはできた。悔いはない」と栃本。後輩からも憧れられ、慕われてきた33歳が、集大成のジャンプで現役生活に別れを告げる。(堀内 啓太)
◆栃本 翔平(とちもと・しょうへい)1989年12月21日、札幌市生まれ。33歳。道尚志学園高(現道科学大高)を卒業後、08年に雪印メグミルク入社。07、09年には世界選手権に出場し、団体で銅メダルを獲得。10年バンクーバー五輪では団体戦5位入賞。174センチ、60キロ。
〇…32歳の原田は有終の美を思い描いた。「最後に1位になれたら最高かな。今季一番のジャンプをしたい」。競技生活24年間。前十字じん帯断裂など4度の両膝手術を乗り越え、今季は19年以来となる札幌W杯にも出場した。満身創痍(そうい)で18日に挑む札幌出身のジャンパーは「うれしい、悔しい、苦しい、全てを経験してきた。ラストは本当に楽しみたい」と笑顔だった。
〇…下川町出身の伊藤将は「やりきった。後悔はない」と笑顔で18日のラストマッチを見据えた。3歳で競技を始め、下川商高3年時に全国高校スキーで優勝。女子W杯個人6勝で五輪3大会出場の有希を姉に持ち、17年アジア冬季競技大会では男子団体ラージヒルで金メダルも獲得した。だが「ここ何年か、何を試しても成長している感覚がなかった」と引退を決断。最終戦へ「いつもどおり飛びたい」と柔和な表情で話した。