サッカーU―20日本代表は、15日にU―20アジア杯(ウズベキスタン)の準決勝でイラクに敗れ、ベスト4で姿を消した。前半12分、セットプレーからの失点をはじめ2度リードを許したものの、粘り強く追いつき、2―2でPK戦へ。しかし、PK戦で力尽きた。
掲げたアジア優勝は達成できなかったが、下を向く時間はない。5月20日にはU―20W杯がインドネシアで開幕する。抽選会は3月31日を予定。大会前に合宿を組む予定はなく、今回同様”ぶっつけ本番”で挑むと予想されるため、選手それぞれが約2か月間、所属チームで過ごす一日一日が勝負となる。アジア4強の悔しさも糧に、世界一に向けて再出発した。
世界を見据え、帯同した反町康治技術委員長は「大会を見ていても経験値が足りないなと思うシーンはあった。相当、奮起させないといけない」と厳しい言葉も口にした。高校卒業して間もない年代特有の、日本ならではの課題でもあるが、所属チームで出場機会を十分得ている選手は限られる。今大会に出場した選手では、J1だと主将のMF松木玖生(FC東京)のみ。ただ、厳しいアジアの舞台を戦った選手の成長は大会を通じて感じられた。
個々の力を上げることは前提に、ビルドアップの組み立てやセットプレーでの守備、試合の入り方といった反省点も浮き彫りになったが、伸びしろは大きい。新型コロナウイルスの影響も受けて世界経験を積むことができなかった世代が、その分を取り戻すべく、吸収し続けている。準々決勝のヨルダン戦は23人で戦う日本の強みを存分に発揮し、巧みな試合運び。冨樫剛一監督は「一戦一戦の成長はものすごい感じる。難しいゲームを続けてきたからこそ」と実感していた。
反町技術委員長は「20歳の選手は将来的に次、その次のW杯へメインストリートを走らないといけない。絶対ここで世界に出ることが大事。壁にぶつかることもいいかもしれない。練習場一つ見ても(厳しい)。そういうことを経験して強くなっていく。1試合は90分かもしれないけど、絶対に経験値は生かされる。W杯が分岐点になってくれれば」とアジアに挑む意義、W杯切符を勝ち取らなければいけない理由を語った。学びを生かし、ここからさらに勝負へのこだわりを突き詰めることが求められる。
本大会のメンバーは2枠減って21人と、さらに狭き門となる。「このメンバーで勝ったからと言って、そのお礼で連れていくわけではない」と反町技術委員長は明言した。人数、大会日程を踏まえても「この世代もコンバートすることは考えないといけない」と、複数ポジションをこなす重要性もメンバー選考の上で今まで以上に増すだろう。
海外組の招集に向けた交渉も引き続き行う。候補に挙がるのは、MF福井太智(バイエルン)、DFチェイス・アンリ(シュツットガルト)、MF中井卓大(Rマドリード)、FW福田師王(ボルシアMG)ら。アジア予選は招集が難しい背景もあったが、「W杯となると、クラブ側も好意的にしてくれるのでは」と期待を寄せた。また、2018年のU―15日本代表を最後に招集歴はなく、ドイツの世代別代表との兼ね合いで難しいとの見方を示すが、「1回呼ぶ予定だったけど、けがで来られなかった」とGK長田澪(ブレーメン)もリストアップされている。
4月には、今大会出場機会の少なかった選手や招集外の候補選手で国内合宿を実施予定。けがから復帰したJ2町田MF宇野禅斗のように「W杯まで2か月もある。試合に絡んで結果を残せばチャンスはある」と鼻息を荒くする選手は多い。FC東京MF俵積田晃太といった、新戦力の台頭も頼もしい。新たなサバイバルが、また一つ日本を強くするはずだ。残された時間は長くないが、一人一人が高い意識で世界に挑む準備を進めていく。(小口 瑞乃)