12日の千葉戦で初めて秋田のホームゲームを取材した私に、うれしい驚きがあった。ホーム開幕戦を1―0で制し3連勝を飾った直後、秋田の選手がバックスタンドとゴール裏のサポーターのもとへ駆け出した。
ここまではよくある話だが、なんと選手全員がサインペンを持っていた。勝利のダンスを踊った後「サインしますよ~」「僕のが欲しい人!」などと呼びかけると、スタンドは熱狂に包まれた。選手は約3分間、ユニホームやグッズなどにペンを走らせながら喜びを分かち合った。笑顔、笑顔の輪が広がった。東京での勤務時代を含めると数百試合を取材した経験があるが、こんなファンサービスは初めて見た。
岩瀬浩介社長は「コロナ前のJ3時代は勝った時にバックスタンドだけでやっていましたが、今年から復活させてゴール裏にも広げました。ゴール裏のお客さんに楽しめる付加価値をつけたい」と明かした。練習場へ見に行けばサインをもらえる可能性はあるが、平日に会社や学校がある人はなかなかチャンスがない。競技場が古くスタンドが低い点を逆手に取ったナイスアイディアだ。
J2唯一の4戦連続無失点で快進撃を支えているGK圍(かこい)謙太朗は「最高に楽しい雰囲気でした。サポーターの皆さんが週末ここに来れば1週間頑張れるように、僕らが先頭に立ってやっていきたい」と力を込めた。千葉戦で決勝点を挙げたDF河野貴志も「サポーターの声が力になりました。これからも勝利で恩返ししたい」と続いた。開幕4試合を3勝1分けの3位とスタートダッシュに成功し、次節は19日に再びホームで水戸と対戦する。サインが欲しいサポーターは、ぜひスタジアムへ!(東北支局・岩崎 敦)