女優・吉永小百合(78)が、山田洋次監督(91)の新作「こんにちは、母さん」(9月1日公開)で、人生初の「おばあちゃん役」を演じることになった。15日、都内で行われた完成報告会見で詳細が明かされた。
64年の女優人生、123本目となる映画での挑戦。吉永は俳優・大泉洋(49)と親子、女優・永野芽郁(23)とは祖母と孫を演じる。90本目のメガホンとなる山田監督は「ミューズ(女神)のような吉永小百合を、僕がおばあちゃんにしていいのか。悩んだ揚げ句の果てに」本人に相談したことを明かし、吉永からは「もちろんです」と即答で快諾を得たという。
ところが吉永は「『もちろん』と言ってしまったけれど、早まったかなぁ」と時間がたって不安に襲われたことを吐露。「私に子供はいないけれど、私の年代の多くがおばあちゃんになっているので」とも思い直した。
そんな中、最終的に吉永の迷いを払拭したのは永野の存在だった。会見中は「舞ちゃん、舞ちゃん」と永野の役名を連呼。「(孫の)相手が舞ちゃんで、本当にすてきで。私は11歳でこのお仕事を始めましたが、舞ちゃんは8歳からで先輩のように思えた」といい、「舞ちゃん(永野出演)の映画はずいぶん見てるんだけど、一緒に共演して幸せなひとときを持てた。やって良かったと思っています」と晴れ晴れとした表情を見せた。
同作は脚本家・永井愛氏の戯曲が原作。2001年の初演を見た山田監督が構想に約20年かけた。初演時の主演・加藤治子さん(15年死去、享年92)の短い髪が印象的だったことから、吉永もショートカットにすることを決意。これまでは、ほとんど男性から恋愛感情を寄せられる役だったが、今作では逆にアタックする側となり、初おばあちゃん役と共に牧師(寺尾聰)とのロマンスの行方も注目される。
吉永と親子役で初共演の大泉洋「宝のような時間」
撮影前に「吉永小百合から僕は生まれない」と話していた大泉だったが、クランクイン後は考えを一変。「毎日毎日が楽しくて、小百合さんの恋する姿がかわいくてすてきで。『小百合さんから、間違って生まれたんだ』と思えた。自分の宝のような時間になった」と振り返った。親子を演じる上で大泉に子供時代の写真を借りて演じた吉永は「大泉さんのサポートに助けられた」と感謝した。
一方、「キネマの神様」(21年)に続いての山田組参加となった永野は、吉永との初共演に「『私でいいんですか』とも思いましたが、こんな光栄なチャンスはなかなかないので」とコメント。「とにかくすごい方。撮影中は失礼がないようにと思いながら。でも(吉永は)背中が温かくて。いつかこんな女優さんになりたいです」と意欲を見せた。
“恋人”寺尾聰とは54年ぶりの共演 〇…吉永と寺尾の共演はフジ系「愛ある限り」(69年)以来。寺尾の父、宇野重吉さんとは何度も共演したことがあり、「とってもお父様に似てこられて、びっくりしました」と感慨深げ。吉永に思われる役を演じる寺尾は「あの時から50年以上たっているのに全然変わっていない。ナンバーワン女優。再会がうれしく共演も自然にできたと思う」と話した。また宮藤官九郎、YOU、枝元萌、田中泯の出演も発表された。