羽生結弦さんと内村航平さんが示した完全解答 「美」と「美」のかけ算の答え

BTSの「Dynamite」を踊る羽生結弦さん
BTSの「Dynamite」を踊る羽生結弦さん

 フィギュアスケート男子で2014年ソチ、18年平昌五輪を連覇し、昨年プロ転向した羽生結弦さん(28)が座長を務めたアイスショー「羽生結弦 notte stellata」(10~12日、宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ)に、体操男子個人総合で12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪を連覇した内村航平さん(34)がゲスト出演した。初共演が実現した夏と冬のキングがリンクで融合。演技を通じて熱くリンクした2人の胸中を10日の公演初日後の談話と、取材した高木恵記者のコラムで振り返る。

 「美」と「美」のかけ算の答えを、4分間の演目で提示してみせた。羽生結弦のフィギュアスケートと、内村航平の体操の融合。美しさを追求してきた2人ならではの化学反応が、会場の熱量を上げた。

 第1部の最後、リンク脇のステージに突如現れたのは床だった。黒を基調に金の装飾を施したそろいの衣装で登場。冒頭は振付師のデービッド・ウィルソンが、内村の登場以降は羽生自身が振り付けたという「conquest of paradise」の荘厳な曲調に乗せ、冬の王が跳び、夏の王が宙を舞った。

 「打ち合わせだったり、相談だったり、振り付けの構成だったりとか、相談はほとんどなく。お互いが、自分たちにできることをぶつけ合おうという感覚で進めてきた」と羽生。初めて一緒に演目を通したのは、開幕2日前だった。見せ場となった、スピンと円馬の開脚旋回のシンクロは、内村のアイデアだった。「『僕が合わせるんで大丈夫です』って言われて。じゃあ、お願いしますっていう感じで」(内村)。ショーの先輩らしく、体操界のレジェンドをリードした。

 「お互いの本気のエネルギーが混ざり合うみたいなところを、このプログラムでは出したいという意識があった」と羽生が言えば、「互いが互いをリスペクトしているので、呼吸も合いやすい」と内村。最終日のコラボを終えた2人は、右拳を突き上げながら舞台を後にした。「同じ価値観」「似た者同士」と認め合う夏のキングと冬のキングは、ぶつかり合い、共鳴するように、3日間の真剣勝負を終えた。(高木 恵)=敬称略、おわり=

内村航平さんと「conquest of paradise」を演じた羽生結弦さん
内村航平さんと「conquest of paradise」を演じた羽生結弦さん

内村さんから見た羽生さん「やっぱりこの男はすごいな」

 ▽旋回とスピン

 「やっている本人たちは、自分のやることに必死で。どういうふうに見えているかって全然、分からないんですけど。目の前で羽生君がスピンをしているところと、円馬で旋回をしているところが、自分の目で見てコラボできているなって感じをものすごく感じる部分」

 ▽初のアイスショー

 「うらやましいです。僕は体操の普及に今、重きを置いてやっているので。体操もこんなふうになればいいのになと。(グランドフィナーレで)羽生くんが僕の前を滑っていて。やっぱりこの男はすごいなと思いながら、滑らせて、滑らされてました(笑い)。コラボのところも羽生くんがいるからこそ、あんなに大盛り上がりしている。本当に結弦、すご~い! って感じっす。それを今日、つくづく感じた一日でしたね」

 ▽羽生さんの魅力

 「常に全力なところです。本当に羽生くんのこだわりの色がすごく出ているショーになっていると思います。試合前の羽生くんのあの集中している感じを生で見られた。全力なんだな。試合じゃなくても、あの感じを出せるっていうのは。僕が体操クソバカ野郎ですけど、スケートクソバカ野郎だなって思いました(笑い)」

 ▽似た者同士

 「天才ではないと思いますけどね、お互い。ちゃんと努力してこの場にいる。お互い、似た者同士。結果も五輪2連覇ですし、その競技を極めたいっていう者同士で、まだ極めきってないって思っていると思うので。彼も。お互いがお互いのことをリスペクトしているので、呼吸も合いやすいのかなと感じました」

羽生さんから見た内村さん「 単純な言葉にすると『かっこいいな』」

 ▽オーラ

「同じオーラを持ってる人だなっていうのはすごく思いました。僕も僕のことに集中してやらないと、自分の演技が流されてしまうくらいのオーラがあります。僕自身、最近、単独のショーもやらせていただいているからこそ、より自分のスケートにクオリティーを求めなくてはいけない気持ちもあって。コラボの練習をするときに、実際、きょうコラボしているときに、自分も見たいなと思ってしまうくらいのオーラは感じていました。そういう意味でプロなのかなって思ったんですよね」

 ▽カリスマ

 「競技とか、技とか、技術とか、そういう枠を超えて人を引きつけるもの。カリスマ性的なものとか。内村航平という人間に成績がなかったとしてもきっと、そういうものを感じるんだろうなっていうことを今回、コラボしながら感じていました。単純な言葉にすると『かっこいいな』と思いました。内村航平という人物の体操は、体操だけにとどまるものではないと感じました。実際にこうやって形になってみて、今日の歓声を聞いてみて、実際に自分もやってみて、新しい形としてすごく膨大なエネルギーが生まれるなと思いました」

 ▽本気のぶつかり合い

 「試合感もありましたし。僕自身も4回転を跳ぶ。彼も本気の技を繰り出してくださっていたので。集中して自分の世界に入っていることは確かなんですけど、床とスケートリンクっていう場所は違うんですけど、エネルギーが増幅して、でも支え合って、ぶつかって、みたいな。いろんな力の掛け合わせみたいなものが見えたかなと思います」

BTSの「Dynamite」を踊る羽生結弦さん
内村航平さんと「conquest of paradise」を演じた羽生結弦さん
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