侍ジャパン佐々木朗希の幼なじみの青学大・佐々木塁が日本学生ハーフマラソンで力走

スポーツ報知
コースを周回する青学大・佐々木塁(中、カメラ・宮崎 亮太)

 WBC1次ラウンド第3戦のチェコ戦(11日)で、ロッテの佐々木朗希(21)が日本の勝利投手となった。闘志を内に秘めるようにして力投する佐々木朗希の姿を見ると、私は、青学大駅伝チームの佐々木塁(3年)が同じく闘志を内に秘めるようにして力走する姿が思い浮かぶ。

 同い年の二人は、同じ岩手・陸前高田市内の小学校に通い、同じ少年野球チームに所属していた幼なじみ。2011年3月11日の東日本大震災では、ともに父を亡くした。様々な思いを共有している。

 朗希が力投した翌日、塁は日本学生ハーフマラソン(12日、東京・立川市陸上自衛隊立川駐屯地スタート~国営昭和記念公園ゴール=21・0975キロ)に出場し、1時間5分13秒で133位となった。自己ベスト記録(1時間3分27秒)から1分46秒遅れのタイムに「まだまだ目標と程遠いです」と塁は厳しく自己評価した。

 ただ、次につながる力走でもあった。ちょうど1か月前に沖縄・宮古島で行われた宮古島ワイドー・ズミ大学駅伝で4区(20キロ)を走ったが、気温26度の暑さの影響で区間4位と苦戦した。「その後、2~3日、熱が下がらず、練習ができませんでした。1か月前に比べれば、調子が上がってきたので、これから、しっかりと練習を積んでいきます」と前を向いた。

 佐々木塁。2001年7月20日、陸前高田市生まれの21歳。野球が好きだった父・敏行さんに「塁」と名付けられた。同じ小学校に通い、同じ野球チーム「高田スポーツ少年団」のチームメートが佐々木朗希だ。「少年団の低学年チームで朗希君はピッチャーで、僕は二塁手でした。当時から朗希君は同級生より20センチくらい大きくて、投げるボールはすごく速かった。お互いの家に遊びに行くくらい仲良くしてもらっていました。楽しかったです」と塁は朗希との思い出を明かす。

 小学校3年生が終わる頃。2011年3月11日。東日本大震災が発生し、陸前高田市は津波による大きな被害を受けた。塁と朗希はともに父を亡くした。「地震後、母(勤子さん)とは高台ですぐに会えたんですけど、父とは会えなくて、3日後に…。朗希君も家族を亡くしたことを後で知りました」

 4年生になった時、塁は盛岡市へ、朗希は大船渡市に転居した。「あの時以来、朗希君と会っていません」という。

 小学生時代から走ることが得意だった塁は盛岡・河南中に入学すると、本格的に陸上を始めた。そして、いきなり才能が開花した。1500メートル4分4秒00の中学1年日本記録をマーク。その記録は今も歴代1位だ。2年時には4分0秒01の中学2年日本記録(当時、現在歴代5位)、3年時には3分53秒69の中学日本記録(当時、現在歴代3位)をたたき出し「天才中学生ランナー」と呼ばれた。

 県内外の強豪私立高から勧誘を受ける中、岩手県トップレベルの進学校の盛岡一高に進学した。石川啄木や宮沢賢治も通った名門校だ。盛岡一高でも全国レベルの成績を残し、2020年に青学大に入学。「大学では中距離よりも長距離で勝負したい、と思っていました。高校2年の3月に青学大から声をかけてもらい、強いチームに行くことを決めました」と語る。

 覚悟を持って青学大に入学したが、現実は厳しい。自己ベスト記録は5000メートル14分3秒13、1万メートル29分13秒。中位から下位校であれば学生3大駅伝のメンバーに選ばれる可能性を持つ実力をつけたが、上位校の青学大ではメンバー争いが厳しく、3年時まで学生3大駅伝の出場はない。

 チャンスはあと1年。大学卒業を機に競技の第一線から退くことを決めており、現在、就職活動を行っている。「最後の箱根駅伝ではアンカー(10区)を走りたいです」ときっぱり話す。

 地道に練習を継続する塁を原晋監督(56)は高く評価している。「本気でアンカーを狙ってほしい。競技も学業も頑張る爽やか青年だから、第100回箱根駅伝のゴールテープを切るにふさわしい選手です」と期待する。

 日本学生ハーフマラソン前日の3月11日。東京・町田市の選手寮のテレビで朗希の雄姿を見たという。「同学年なのに朗希君は日の丸をつけて活躍している。本当にすごいと思うし、尊敬します。レベルは違いますけど、刺激になります」と塁は、ほほ笑みながら話した。

 すでに塁のラストシーズンは始まっている。「箱根駅伝のアンカーに求められるものは体力とメンタルの両方の粘り強さと思います。これから、もっと体調を上げて、夏合宿ではAチームでしっかりと練習をしたい」。静かな口調で、熱い思いを明かした。

 二人のR・SASAKI。応援したくなる選手だ。(箱根駅伝担当・竹内 達朗)

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