宝塚歌劇月組「応天の門―若き日の菅原道真の事―」「Deep Sea―海神たちのカルナバル―」がこのほど兵庫・宝塚大劇場公演を終え、25日に東京宝塚劇場公演が開幕する(4月30日まで)。「応天の門」では知性豊かで、のちに“学問の神様”となる菅原道真を、トップスター・月城かなとが説得力たっぷりに体現した。脚本・演出の田渕大輔氏は「月城歌舞伎」と表現して、月城の芝居の魅力を語った。
◆理論的かつ感情的
「応天の門」は「月刊コミックバンチ」で連載中の灰原薬氏の同名漫画が原作。平安京を震撼(しんかん)させる鬼の一味の裏側を、道真と在原業平(ありわらのなりひら=鳳月杏)らが解決していく。立ち芝居が多く、歌劇らしいダイナミックさに欠けるきらいはあるが、冷静沈着な道真に月城がしっかり芯を通して、物語を引っ張った。
田渕氏は原作を読み「いつか宝塚でできれば」と企画を温めてきた。「道真の人間味を含め、トップで誰に当てはめるかとなると、れいこちゃん(月城の愛称)ならピッタリでは、と。自分の感情、人の感情も突き放して優しく見守るような知性が、私の中ではれいこちゃんとかぶりました」と月組での舞台化を説明した。
“芝居の月組”のリーダーに感じた魅力を「月城歌舞伎」と名付けた。「役づくりを理論的にやるかと思えば、その時一瞬、起こった感情もとても大事にする。相反する2つを精査して舞台に。芝居の圧力がかかった状態を続けながら、自分の感情をちゃんと乗せるのは本当にすごい。『疲れへん?』って聞いたら『すごく疲れます』と言ってました(笑い)」と田渕氏。その姿勢は組子にも連動する。「彼女がストイックな背中を見せていれば、そこを追いかけざるを得ない。『育てる』とはこういうことなのか、と思います」と称賛した。
◆幸せラテンショー
一方のショー「Deep―」では雰囲気は一転し、海の底を舞台に、情熱的に踊り歌う。月城は「自分もファン時代はラテンショーが大好きだったので、それに挑戦できるのは幸せ」。女役の鳳月との艶やかなダンスもあり、タカラヅカらしい変幻自在ぶりで楽しませた。
月組は1作前の「グレート・ギャツビー」の宝塚大劇場公演がコロナ禍のため、全日程の約3分の1しか上演がかなわなかったが、今回は全日程を無事に完走した。6日の千秋楽で月城は「今いるこのメンバーで最高の舞台を作ろうと悩み、集中した1か月間。本当にかけがえのない時間でした。東京公演に向かって、またみんなと心一つにして頑張ってまいりたい」とスピーチ。東京千秋楽をもって退団する組長・光月るう、千海華蘭(ちなみ・からん)らと「月組バンザイ!」の掛け声で一斉にジャンプし、本拠地から卒業生を送り出した。
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