今年のオスカーの行方は? 日本時間13日発表の米アカデミー賞、作品賞ノミネート作紹介【上】

スポーツ報知
「アバター/ウェイ・オブ・ウォーター」(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 米映画芸術科学アカデミーが主催する第95回アカデミー賞は、12日(日本時間13日)に発表・授賞式が米ロサンゼルスで行われる。「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞を受賞した昨年と異なり、残念ながら今年は日本からのノミネート作品は無いが、話題作、注目作がそろった作品賞ノミネートの10本を紹介する。(高柳 哲人)

 ◆アバター/ウェイ・オブ・ウォーター(公開中)

 <他のノミネート>視覚効果賞、美術賞、音響賞

 <あらすじ>2009年に公開され、現在も全世界での最高興収記録を持つ「アバター」の続編。元海兵隊員のジェイクは、地球から遠く離れた神秘の星・パンドラで、先住民・ナヴィの女性ネイティリと家族を築き、平和に暮らしていた。だが、人類が再びパンドラに来訪。神聖な森の侵略を始めた。森を離れることを決めたジェイク一家は、海の部族の元へ身を寄せることに。だが、そこにも人類の手は容赦なく伸びて来る。

 <ひとこと>3D映画の走りとして製作された前作も、その圧倒的な映像美に驚かされたが、今作はそれ以上の迫力で没入感を味わうことができる。3時間以上の上映時間も全く苦ではなかった。とはいえ、「これは映画なのか」と言われるとクエスチョンマークが浮かぶのもまた事実。映画を見ているというよりも、遊園地などのアトラクションで壮大な映像体験をしているといった方がしっくり来るだろう。

 個人的には「どんな映画?」と聞かれたら「『クジラを獲っちゃいけないよ』と教えられる映画」と説明したいところ。海外での大ヒットと比較すると、国内興収が思ったように伸びなかったのは、日本がクジラを食べる国だからではないとは思うが…。

 ◆イニシェリン島の精霊(公開中)

 <他のノミネート>監督賞、脚本賞、主演男優賞(コリン・ファレル)、助演男優賞(バリー・キオガン、ブレンダン・グリーソン)、助演女優賞(ケリー・コンドン)、編集賞、作曲賞

 <あらすじ>アイルランドの孤島・イニシェリン島。島民全体が顔見知りの小さな島で、酒癖こそ悪いものの気のいい男・パードリックは突然、友人のコルムから絶縁を告げられる。周囲の力を借りて関係を修復させようとするがコルムは聞く耳を持たず、ついには「これ以上関わったら、自分の指を切り落とす」と宣言する。やがて、平和そのものだった島に、徐々に変化が訪れる。

 <ひとこと>退屈な島の中で、変化を恐れて生きている主人公の周囲に訪れる出来事。その変化におびえ、酒に逃げ道を求めて怒りを周囲にぶつける男をコリン・ファレルが見事に演じている。その姿は、正直言ってイラッとさせられるところもあったが、現代社会の孤独感につながるところもあるのではないか。見る時の心境によって、登場人物の誰に仮託したくなるのかが大きく変わりそうな作品でもある。

 一つ願うのは、撮影が行われたアラン諸島のイニシュモア島が「何もない、つまらない島」という印象を持たれないこと。30年近く前に行ったことがあるが、神話の世界が残る、素晴らしい場所でした。

 ◆ウーマン・トーキング 私たちの選択(6月2日公開)

<他のノミネート>脚色賞

 <あらすじ>自給自足で生活する敬虔(けいけん)なキリスト教一派の村で、少女の性的暴行事件が発生した。男たちは逮捕され、村には子供と女性だけが残される。女性たちは男たちが保釈されるまでの2日間で「男を許す」「男たちと戦う」「村を去る」のいずれかの選択を迫られる。全員による投票では結果が出ず、結論は2家族8人による話し合いに委ねられることに。意見がぶつかり合う中、最後に出された結論は―。

 <ひとこと>男性の出演者は基本的には”書記役”のベン・ウィショーのみ。心情の起伏はあるものの、全編を通じて淡々と進んで行く会話劇でもあり、どちらかというと演劇に向いている題材のような印象を持った。

 もうちょっと出番を見たかったプロデューサーでもあるフランシス・マクドーマンド(19年「ノマドランド」で主演女優賞受賞)、ルーニー・マーラの抑制の効いた演技は見どころ。ラストシーンも圧巻だった。ただ、記者が男だからというのが理由にあるのかもしれないが、村の男性の言い分が一切登場せず、「自分たちの判断こそが正しい」という描き方は気になるところでもあった。

 ◆エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(公開中)

 <他のノミネート>監督賞、脚本賞、主演女優賞(ミシェル・ヨー)、助演男優賞(キー・ホイ・クワン)、助演女優賞(ステファニー・シュー、ジェイミー・リー・カーティス)、衣装デザイン賞、編集賞、作曲賞、主題歌賞

 <あらすじ>中国移民のエヴリンは経営する赤字コインランドリーの仕事に加え、渡米してきた父の介護、優柔不断な夫と反抗的な娘への対応に忙殺され、疲れ果てていた。そんなある日、店に監査が入り、税金の申告のやり直しを命じられた。家族で国税庁へ赴くと、夫が豹変(ひょうへん)。「全宇宙にカオスをもたらす悪を倒せるのは君だけだ」と告げられたエヴリンは、”別の宇宙”へとジャンプさせられる。

 <ひとこと>今年のアカデミーにおける本命作品。助演男優賞候補のキー・ホイ・クワンは、主要賞の中で「最も受賞が確実」とも言われている。映画ファンにとっては「あの『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』『グーニーズ』の少年が!」という感慨深さもあるかもしれない。

 予告などを見ると、アクションなのかSFなのかよく分からない映画のように感じられるが、テーマは「家族は大事だよ」という極めてシンプルなもの。そのメッセージをマルチバースの世界を取り入れ、予告にある「最先端のカオス」として描き出しているところが面白い。作品の”キーアイテム”として登場する目玉のシールが登場するシーンが、この映画の全てを物語っている。

 ◆エルヴィス(Netflixなどで配信中)

 <他のノミネート>主演男優賞(オースティン・バトラー)、美術賞、撮影賞、衣装デザイン賞、編集賞、音響賞、メーキャップ賞

 <あらすじ>「キング・オブ・ロックンロール」ことエルヴィス・プレスリーの人生を描いた物語。田舎町の青年・エルヴィスは、後にマネジャーとなるトム・パーカー大佐に見出され、若者の熱狂的な支持を集めるようになる。同時に、黒人の音楽を取り入れた彼のパフォーマンスは、白人権力者には敵視の的となった。その後、頂点を極めたエルヴィスだったが、順風満帆に見える活動の裏では破滅の道が始まっていた。

 <ひとこと>プレスリーの人生を、トム・ハンクス演じるパーカー大佐の目を通じて見せるという手法。美術的は、いかにもバズ・ラーマン監督らしさを感じさせ、この題材にはピッタリといえる。プレスリーといえば、数え切れないほどの物まねをする”そっくりさん”がいるが、ほぼ吹き替え無しで臨んだオースティン・バトラーの再現度にも驚かされる。

 世間の注目が集まりつづけることで、プレスリーが悲劇的な結末を迎えるのも、よく知られたところ。デビュー前の移動遊園地のシーンで、プレスリーの背後に、昨年の米アカデミー賞の作品賞にノミネートされた「ナイトメア・アリー」でも登場した「ギーク」(見世物芸人)のポスターが貼られている暗示が興味深い。

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