箱根駅伝優勝4回を誇る古豪、大東大は今年度、復活へ確かな一歩をしるした。宮城・仙台育英を19年全国高校駅伝で優勝に導いたOBの真名子圭(まなこ・きよし)監督(44)が昨年4月に就任。チーム改革に成功し、昨年10月の箱根駅伝予選会を4年ぶりにトップで突破を果たした。ただ、本戦は16位に終わった。真名子監督は、収穫も課題も多く得た1年目を振り返ると同時に、飛躍を期す2年目への展望を語った。(取材、構成=竹内 達朗)
真名子監督は就任1年目を端的に自己採点した。
「箱根予選会まで100点満点。その後は50点です」
19年箱根1区で新井康平(当時4年)がスタート直後に転倒する不運に見舞われ、19位。その後、3年連続で予選会敗退に終わった。復活は真名子監督に託された。19年度まで奈良修元監督(52)、20~21年度は馬場周太前監督(41)と短期間で交代し、現4年にとっては3人目の監督だった。
「監督が何度も代わるという状況で選手はすれてしまっているかも、と思ったら全く違った。強くなりたい、という気持ちにあふれていた。奈良監督や馬場監督を否定するわけではありませんが、スピード練習も練習量も足りていなかった。練習時間やメニューは毎週、決まっていたが、今は体調や天候を考慮し、細かく設定しています」
新監督の改革と選手の意欲はかみ合い、結果は表れた。昨年6月、全日本大学駅伝関東選考会を5位で通過。同10月の箱根予選会ではトップ通過し、4年ぶりの復活出場を果たした。
「全日本はサプライズでしたけど箱根予選会の突破は予定通り。全員が自信を持っていました」
予選会まで「100点満点」でも本戦では苦戦した。
「トップ通過はうまく行き過ぎた。選手は体も心も上がりきってしまった」
3区終了時点で最下位。4年ぶりの箱根路は甘くなかった。しかし、収穫もあった。総合16位(往路17位、復路12位)ながら記録は11時間6分8秒。チーム記録(19年・11時間19分48秒)を13分40秒も更新した。
「箱根駅伝はやりがいがあります。走った選手も走れなかった選手も本戦に出場することで経験を積んだ。来年はシード権(10位以内)を取ります」
経験豊富な指揮官は上を見るだけではなく、足元を見ることも忘れてはいない。
「1年目、ほぼ順調だったからこそ2年目に落とし穴もある。自信を持つことは大事ですけど、油断をすると怖い。そのバランスに気をつけたい。大東大の完全復活はまだ先です」
今年9月20日に創立100周年を迎える大東大。メモリアルイヤーに第100回箱根駅伝に臨む。
◆新主将の松村確信「成長できている」 〇…真名子監督と同様に選手も、22年度は確かな手応えを得て、新年度に向けては自信を持っている。新チームの主将に就任した松村晴生(3年)は「監督の練習メニューは目的が明確なので、みんな成長できている」と話す。今回の箱根で1区15位だった久保田徹(3年)は「来年は2区で他校のエースと戦いたい。必ずシード権を取ります」と誓った。
◆真名子 圭(まなこ・きよし)1978年9月27日、三重・四日市市生まれ。44歳。97年に四日市工から大東大に入学。箱根駅伝では1年7区14位、2年1区14位、3年1区9位。主将を務めた4年時は10区で区間記録(当時)の区間賞。2001年にホンダに入社。06年に退社し、教員免許取得のため再び大東大で2年、学ぶ。その間はコーチを務めた。三重県の公立高校に勤務後、12年に仙台育英高監督。全国高校駅伝で優勝1回、2位1回、3位2回。家族は妻と1男2女。