来年1月から「NISA」制度変わる…高橋由伸氏らトークセッション

登壇した(左から)清田瞭・日本取引所グループ取締役兼代表執行役グループCEO、永井浩二・野村證券取締役会長、中島淳一・金融庁長官、馬場典子さん、高橋由伸さん、木原誠二内閣官房副長官、渋澤健・コモンズ投信取締役会長、森田敏夫・日本証券業協会会長、松谷博司・投資信託協会会長、「証券知識普及プロジェクト」マスコットキャラクターのとうしくん
登壇した(左から)清田瞭・日本取引所グループ取締役兼代表執行役グループCEO、永井浩二・野村證券取締役会長、中島淳一・金融庁長官、馬場典子さん、高橋由伸さん、木原誠二内閣官房副長官、渋澤健・コモンズ投信取締役会長、森田敏夫・日本証券業協会会長、松谷博司・投資信託協会会長、「証券知識普及プロジェクト」マスコットキャラクターのとうしくん

 「NISA(少額投資非課税制度)」の関心を喚起し、政府が掲げる「資産所得倍増プラン」への理解を深めることを目的とした「NISAの日記念イベント~資産所得倍増に向けて~」がこのほど都内で開催。政官民の専門家によるパネルディスカッションに続き、スポーツ報知評論家の高橋由伸氏(47)、フリーアナウンサーの馬場典子氏(48)、日本証券業協会会長の森田敏夫氏(61)によるトークセッションが行われた。

主催:日本証券業協会、株式会社日本取引所グループ、一般社団法人投資信託協会 共催:金融庁

■「恒久化」と「拡充」資産形成強い味方
 2014年からスタートした「NISA」。「少額から投資が始められる」「配当金や売買益等が非課税」などその優遇措置の魅力と取り組みやすさにより投資初心者から注目を集めてきた同制度だが、24年1月より恒久化、拡充されることが昨年12月、与党税制改正大綱で示された。2月13日の「NISAの日」を記念して開催された同イベントは、証券投資による資産形成の大切さと、そのための強い味方となる新しいNISAについて広く知ってもらおうというもの。イベント後半のトークセッションでは高橋氏と馬場氏が“投資初心者代表”として、森田会長から“特別講義”を受けた。

【表1】
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 森田会長は、岸田内閣が進める「資産所得倍増プラン」について「多分、国民の皆様の多くは、『倍増なんて無理だろう!?』と感じられたと思うのですが、可能性はあります」と力を込める。

 森田会長はまず、00年から21年末までのアメリカ、イギリス、日本の個人による金融資産成長率の比較を紹介。アメリカ3・4倍、イギリス2・3倍と倍以上成長しているのに対し、日本は1・4倍にとどまっていることに触れ、この結果は、運用リターンの差が大きく影響しているという分析結果を明かした【表1】。

 プロ野球選手時代のライバルの中には海外を拠点にしている者も少なくないという高橋氏は、「時折、資産運用の話も耳にしますが、ここまで差があるとは」、馬場氏も「日本だけ若干取り残されているような印象があります。アメリカもイギリスも(金融)資産の成長を支えているのは運用実績だということが一目瞭然ですね」と、欧米人の投資に対する関心の高さに驚いた。

【表2】
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 では、どのようにすれば日本の投資による資産運用を活性化できるのか?―。森田会長はその“起爆剤”として新しいNISAに期待をかける。「(NISA制度は)23年度までの時限措置だったのですが、24年度以降は期限なし(恒久化)となります。非課税の期間もこれまで一般NISAは5年、つみたてNISAは20年と期限がありましたが無期限となります。年間で非課税になる投資額も、つみたてNISAは40万から120万、一般NISAは120万から240万と大幅に増額しました」。さらに今まで選択制だった一般NISAとつみたてNISAが併用可能になるなど、「恒久化」と「拡充」によってさらに“使い勝手”が向上することを紹介した【表2】。

■由伸氏手軽さいい「試したくなった」
 高橋氏は「(NISAについて)テレビなどで耳にすることも多かったのですが詳しいことが分からず、なかなか“最初の1歩”が踏み出せずにいたのですが、ここでしっかり勉強できた。また、ネットでもできるのが手軽でいいですね。ちょっと試してみたくなりました」と興味津々。馬場氏も「私も『NISAやらならきゃ』と思いながら今に至るのですが、これまでの制度と新制度を併用できるところがお得だなと思いました」と、来年度以降さらに充実する数々の優遇措置に強い関心を示した。

 そんなふたりに森田会長は、初心者が始めやすいものとして同じ投資信託を毎月同金額コツコツと購入するつみたてNISAの後継である「つみたて投資枠」を勧めた。その理由は、「高い時には少し買い、安い時には多く買う『ドルコスト平均法』に沿った中長期運用は、パフォーマンスが上がりやすい仕組みだといわれているからです」。そして、馬場氏からの「中長期とは何年以上と考えればよろしいでしょうか」との問いには、「長ければ長いほど(利益を得る)可能性が増してくるとは思いますが、10年前後保有すると、ある程度の利益が期待しやすいと思います。できれば20年、25年くらい運用していただきたいなと思います」と答えた。

 監督時代も含め約21年間プロ野球の世界で戦ってきた高橋氏は、「僕たちアスリート、特にプロ野球選手の現役生活は短い。成績によって収入の“上がり下がり”が激しく、けがをしてなくなってしまうこともある。引退してからの人生の方がずっと長いですから、様々な不安を抱えながらプレーをしている選手も大勢いると思います。私も現役中、(投資による資産運用に)考えがいかなかったのですが、こういうことを知っておくべきでした」。森田会長は「高橋さんや馬場さんのようにプロの世界で勝負をされてきた方は、収入の多い時とそうでないときの差が大きいと思います。生活の安定を考えた時に、やはり資産形成と運用に向き合っていくことは、とても大事だと思います」とアドバイスした。

 若い選手も入団してから早い段階で投資について学べる機会があれば、という高橋さん。森田会長は、「若い方には時間があり、これを有効に使うのは非常に大事なこと。我々日本証券業協会では、WEBや動画配信で投資について勉強してもらえる教材を揃えています」。そのひとつとして現在人気を呼んでいるのが、クイズ番組「東大王」で有名なタレントの伊沢拓司氏が率いる「QuizKnock(クイズノック)」とのコラボYouTubeチャンネル(まなぶわかるとうしチャンネル)だ。「これはクイズ形式で証券投資を学んでいただこうというもので、非常に分かりやすい内容になっていますのでぜひご覧いただきたいと思います」と、若者をはじめ誰もが投資への理解を深めるための新たな取り組みを紹介し、会を締めくくった。

■岸田総理「貯蓄から投資へ大胆に進める」
 この日、岸田文雄内閣総理大臣よりビデオメッセージが寄せられ、会場を盛り上げた。

 岸田総理は「本年を『資産所得倍増プラン元年』として、貯蓄から投資へのシフトを大胆に抜本的に進めていきます」と明言。日本の家計金融資産拡大のため、NISAの抜本的拡充、恒久化とiDeCo制度の改革をはじめ、顧客本位の業務運営、金融経済教育の充実、消費者が信頼できるアドバイスの提供推進など、総合的な取り組みを進めていくことを明かした。

 資産所得倍増プランによって、現在のNISA口座数1700万口座、累計買い付け額28兆円を5年間で倍増させる。さらに長期的には資産運用収入そのものの倍増も見据えて政策対応を図ることで、家計資産と企業成長投資の好循環の実現を目指すとした。

■企業収益国民へ享受
 プログラム前半のパネルディスカッション「資産所得倍増プランについて」には、木原誠二内閣官房副長官、中島淳一金融庁長官をはじめ、コモンズ投信・渋澤健取締役会長、野村證券・永井浩二取締役会長、そして同会の主催団体である投資信託協会・松谷博司会長という、政官民の金融の専門家が出席。同プランによって描かれる日本の将来について、それぞれの立場から意見を述べた。木原内閣官房副長官は、国内企業の収益の配当等が海外の株主に流れていることに触れ、「成長の果実をしっかりと国民の皆さんに享受していただくことが重要」と話した。

◆高橋 由伸(たかはし・よしのぶ)1975年4月3日、千葉県千葉市生まれ。47歳。桐蔭学園高では1年夏、2年夏に甲子園出場。慶大では東京六大学リーグ新記録の通算23本塁打を放ち、97年ドラフト1位で巨人入団。ベストナイン2度、ゴールデン・グラブ賞7度。15年限りで現役を引退し、16~18年は巨人第18代監督。19年から巨人の球団特別顧問、スポーツ報知評論家を務める。

◆馬場 典子(ばば・のりこ)東京・豊島区生まれ。48歳。フリーアナウンサー・大阪芸術大学放送学科教授。早大商学部卒業後の97年に日本テレビ入社。情報・バラエティー・スポーツ・料理まで局を代表する数々の番組を担当。14年7月よりフリーに。現在、テレビ、インターネット番組、執筆、イベント司会、ナレーション、さらに大学教授として教鞭をとるなど、幅広く活動中。

◆森田 敏夫(もりた・としお)1961年4月17日、鳥取県生まれ。61歳。1985年野村證券入社。10年常務、12年専務、16年に副社長などを歴任し、17年野村證券社長に就任。その後21年に退社し、日本証券業協会会長に就任。

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