J2リーグに初めて静岡県内の3クラブが集まった2023年。2月18日の開幕戦でジュビロ磐田と岡山の試合を取材した。0―3と一方的にリードされ、「何を書けばいいのか」と悩みながら写真を撮っていた終盤に、まさかの展開が待っていた。後半19分にピッチに立った17歳の後藤啓介選手が44分にプロ初ゴール。さらに3分後には、191センチの高さを生かしたヘディングで2得点目。2―3で敗れはしたが、スタンドは興奮したサポーターの「後藤コール」が鳴りやまなかった。
3年前の春、中3になったばかりのときに少しだけ取材した。すでに187センチと高さがあってU―16日本代表にも選ばれており、磐田U―18に飛び級で昇格。3歳上の兄・佑介さん(現順大)がGKとして清水エスパルスユースに在籍しており、「プレミアリーグで東と西に分かれてしまい、戦えないのが残念です」と話していた。
その兄とは、同年9月に行われたSBS杯ドリームユース大会決勝で対戦。清水が4―3で打ち合いを制したが、後藤選手が1ゴールを決めている。当時から規格外だった。
その後もトップチームの鹿児島キャンプに帯同したり、プレミアで10得点するなどの活躍を担当記者から伝え聞いており、今季のトップ昇格に驚きはなかった。それでもリーグデビュー戦でゴールを決めるとは予想していなかった。
だが試合後の17歳は冷静そのもの。「3点目が取れればよかった。力不足でした」と敗戦を悔しがっていた。すでにプロサッカー選手だった。これからのジュビロを背負うスターの誕生を感じさせた。
なお、今月4日の山形戦でも途中出場。得点こそ奪えなかったが、ドリブルでゴール前まで攻め込むなど見せ場を作り、試合後はサポーターに笑顔で手を振って、チームの勝利をだれよりも喜んでいた。これからの1年でどれだけ成長するのか注目していきたい。
(静岡支局・里見祐司)