【番記者の視点】植田直通がもたらすもの 「うまい」より「いやらしく」 鹿島復権のピースになるか

スポーツ報知
鹿島・植田直通

◆明治安田生命J1リーグ▽第3節 横浜FC1―3鹿島(4日・ニッパツ三ツ沢)

 【鹿島担当・内田知宏】隣で試合を見ていた鹿島OBで、元日本代表DFの伊野波雅彦さんは試合終了のホイッスルが鳴ると「今日のMVPは植田だね。(相手に)何もさせなかった」と席を立った。藤井智也、鈴木優磨に今季初ゴールが飛び出し、アルトゥール・カイキが試合を決めた。後半44分から逆転負けを喫した前節・川崎戦の反省を生かし、追いつかれても後ずさりせず、前に出て3得点。快勝を支えた1人に、植田直通が挙げられる。

 試合を通して高さで負けなかったのは言うまでもなく、後半30分、ゴール至近距離からのシュートブロックはまさに値千金だった。追いつかれても、勝ち越しても揺れないプレーを見せた。この試合に限らず、カウンターにもうまく対応し、スピードを落とさせる。「自分はDFなので、体を張ることが仕事です。チームのために働こうとずっと思っている。そういうプレーが出たのは良かったし、失点につながるのを阻止できたのは僕にとっても自信になる。これからも続けていければと思います」。植田の表情はすがすがしかった。

 ここ数年、鹿島の試合を見て漠然と感じていた。守備で不格好な対応をするシーンが減った、と。昔と違い、センターバックに器用な選手が立つようになった。高さ、強さに加え、スピードがあり、キックも正確。強いタイプのセンターバックを多く輩出してきた鹿島も、時代に倣った。その影響か、そんなに足を広げられるの?だったり、相手とくっつき過ぎて将棋倒しのようになったり、見た目が不格好なシーンを目にする機会は減った。

 日本代表でもセンターバックとして活躍した岩政大樹監督に聞いた。本職とそうでない選手の違いはどこに見えるのか。「ボールを奪うことの優先順位。本職は、そうではない選手と比べて奪うことの優先度が低い。(センターバックは)相手(選手、チーム)の動きを止めることをまず考える」。答えは明快で、守備の順番はボールではなく、相手。そうなれば、大きな違いとなって見えることがあってもおかしくない。規則性のない人に合わせる分、おかしな体勢になるのではないか。

 あっさり決められる失点、いわゆる安い失点が多く、鹿島は勝ちきれないシーズンを過ごしている。今季G大阪から移籍加入した昌子源とともに、日本代表レベルで戦ってきたセンターバックの存在は、勝利の可能性を高められる存在になるばかりか、大器の関川郁万ら若手、DFラインではないチームメートにも気づきを与えるような気がする。岩政監督が「手本」として獲得した狙いが、ここにありそうだ。

 秋田豊さんが現役時代に言っていた。「鹿島のセンターバックは嫌われてなんぼ。相手の嫌がる守備をするからね」。鹿島の守備の伝統は、うまいよりもいやらしく。ショッキングな川崎戦敗戦から、連敗をしなかったチーム。そして植田の存在感。この先の戦いに光を感じられる快勝劇だった。

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