U―22日本代表は3月の欧州遠征で、ドイツ代表、ベルギー代表と対戦する。パリ五輪予選も始まる23年。オランダ1部スパルタのFW斉藤光毅が取材に応じ、「試合一つ一つに全力を注いでいきたい。自分がこのオランダで結果を残せば、代表も見えてくる。練習から、いいプレーを出していくことを意識したい」と新たな1年への抱負を語った。
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充実ぶりがうかがえる表情を見せた。斉藤は昨年6月、ベルギー2部ロンメルからスパルタに加入。初の海外移籍となったベルギーでは、フィジカルの違いだけでなく当初生活面での苦戦もあったが、海外生活にも適応を深めてきた。オランダでは現地にいる日本人に食事をサポートしてもらうなど、サッカーに集中できる環境で過ごしているという。デビュー戦となった昨年9月のフォレンダム戦で2アシストを記録し、出番を増やした。1月21日のカンブール戦では移籍後初ゴールをマーク。主に4―3―3の左サイドで起用されている。
「来た時よりはスタッフや選手、サポーター含め自分を見る目は変わっていると実感する。結果はまだまだ残せてないし満足していないけど、流れを変えたり自分のプレーができたり。徐々に信頼をつかんで、自分のプレーを見せて、パスがきて、いいプレーを出してってそのサイクルに少しずつ入れている。ポジティブなことが起きつつあると思う」
先発出場の試合は増えてきたが、確固たる地位を確立しているわけではない。明確に掲げる課題は「決定力」。全体練習後にはシュート練習やパス練習を繰り返す。結果ばかりを追い求めてしまうこともあった。ただ、今年に入って監督からかけられた言葉は、斉藤の心持ちを少しばかり変えた。
「(スタイン)監督と話す機会があって、『課題は何だ』と聞かれて、『結果を残さなきゃ』と言った。そしたら監督から、『結果を残そうとすると空回りしちゃう。結果もだけど、お前のプレーを見ている』と。『プレーが良くなれば自然と結果はついてくる。自分の仕掛けやストロングポイント、裏への抜け出しとかを存分に出してほしい』と言われた。メンタルが少し楽になったというか、言われて気負いしすぎなくなって、プレーも良くなってきた感覚はある」
カテゴリーの違いはあるだろうが、ベルギー時代は「一人一人がはい上がろうとする野心」を感じ、オランダでは「そういう部分もありつつ、よりチームの勝利のためにという意識が強い」と実感。両面を追求していくつもりだ。チームでは当然、オランダ語が飛び交う。斉藤を含めて5人ほどが英語の通訳を介してプレー。「そこまで困りはしていない」と一通りの指示は理解できるが、英語の勉強は変わらず続けている。
「チームメートとは朝、昼とご飯を一緒に食べる。ピッチ外でどう思われているかはわからないけど(笑い)、輪の中には入れているかなと。もちろんもっと勉強して、ぺらぺら話せるようになって、会話の内容を100%理解して、ちゃんとチームメートとケンカできるくらいになれたらすごいな、いいな、とは思う」
U―16インターナショナルドリームカップで得点王&最優秀選手に輝くなど、早くから世代別代表のメンバーに名を連ねてきた。パリ五輪世代の大岩剛監督が常に”A代表経由五輪”を強調するように、斉藤もまた、A代表への強い意識をずっと口にしてきた選手だ。
「欧州で活躍して世代を引っ張る意識はあるけど、やらなきゃって思うより、常に上を目指しながらやっていれば必然的にチームを引っ張る存在になれると思う。今まで通り上を目指すことに集中したい。パリ五輪がゴールではなくて、この先、A代表や欧州の強いチームに移籍して活躍する目標もある」
「自分の中でこれまでにないくらい最低なパフォーマンスだった」と振り返ったU―23アジア杯。そして、強豪と言われる欧州勢との対戦。U―21日本代表としての昨年の活動も、成長欲を一層高めた。昨年11月はスペイン代表と対戦し、0―2と敗戦。多くの選手が語ったように、記憶に深く刻まれる試合となったようだ。
「相手もうまかったし、強い相手の中で自分たちのサッカーができたと手応えを感じた部分も少しはあった。でも負けているし、周りからしたら『やっぱりね』って思われたと思う。ドリブルの仕掛けは全部抜けるくらいにならないといけないし、ボールを持ったら余裕を持つというか。一つ一つのプレーに対して、メンタル的な余裕はどんなレベルでも持てるようにならないといけない。チームとしてもまだまだ足りないし、これからもっともっと全員で成長して刺激しあって、合わせていかないと。結果は本当に完敗なので、どんなにいいプレーがあっても全員満足はできていない」
直後のカタールW杯では、サムライブルーがそのスペインに勝利を収めた。日本中が沸いた。それでも、「勝ったら大番狂わせ」の雰囲気に覚えた違和感。その構図を変えたいと、本気で考えている。
「勝ったら『日本やるじゃん』みたいに思われるのはなんか違うかなと思っていて。『日本だったら勝てるよね』というようなイメージを、試合を見ている人や戦う相手に持たせられないと、今後いろんな大会で優勝できないと思う。パリ世代もA代表も、一つの基準を上げていかないといけないとは改めて感じた」
そうした基準につなげていくため、まずはオランダでの目の前の1試合にすべてを注ぐ。日本ではオランダの試合を視聴する環境がそう整っていない。自身のプレーを多くの人に見てもらうためにも、活躍は必須だ。オランダではAZに所属するDF菅原由勢と食事をしながら近況報告をするなど、海外で活躍する日本人、日本でプレーする選手、各方面から受ける刺激もパワーに変えている。
「自分がどういう活躍をしているか、プレーをしているか、伝わらない部分もあると思うけど、それも自分が活躍すれば日本に届く。見てもらえるようにしっかり頑張りたいし、ステップアップして欧州5大リーグだったり日本でも見られるようなチームに行くことができれば解決すると思うので、その目標もしっかりぶらさずにやりたい」
人なつっこい笑顔の中にも、日本にいた頃と変わらない芯の強さを感じさせた。描くキャリアを実現させるために―。オランダでたくましく、大きくなっていく21歳の挑戦が、楽しみでならない。(小口 瑞乃)=おわり=