【横浜FC担当・田中孝憲=@sph_thk】どんな仕事でも、ミスをした後が大事だ。横浜FCのDF和田拓也(32)が見せたプロの矜持と仲間の姿に、チームの絆を見た。
先週末、横浜FCの話題が世界を駆け巡った。24日の湘南戦の前半23分、ベテランDF和田のオウンゴール。タッチライン付近からサイドチェンジしようとしたボールが、まるで引き寄せられるかのように弧を描いて曲がり、ファーサイドのネットを揺らした。
1―2となった場面に、DAZNの実況は「信じられないオウンゴールが生まれました」と表現。失点シーンはJリーグの公式ツイッターにも掲載され、海外メディアなどが転載。さらにサッカー専門メディアなどが、国内外のネット反応を集めた記事を配信した。
現地で取材していて、目を見張ったのは、その後の鬼気迫るプレーだった。だから“あのシーン”のことは、記者としてどうしても聞きたかった。
「僕のミスです」試合から3日たった27日の練習後、和田に尋ねると、きっぱり言い切った。記者が「雨の水たまりなどの影響もあったのでは?」と聞いても影響を否定した。そしてベテランは続けた。「本当にみんなには感謝しています。勝っていた試合かな、と結果的には思う。勝ち点2を失ったというのは自分の中では感じています。選手とスタッフには本当に感謝しています」とゆっくり口にした。
失点の直後、主将のDFガブリエウがすぐに駆け寄った。FW小川航基が大きな声を出して手をたたき、イレブンを鼓舞した。1分後、小川航は相手GKの好セーブに阻まれる、枠内シュートを放ち奪い返す姿勢を見せた。サイドバックの和田も積極的に前線に顔を出し、守っては相手の攻撃の芽をつんだ。
四方田修平監督(49)は「ああいう状況にもかかわらず、彼が引きずらずにしっかり自分のプレーをしてくれたのは、さすがだと思う。チームにとっても、力になったと思う。失点直後はぼう然自失という感じでしたけど、周りの励ましで、彼もやらなきゃと思っただろう。和田のミスとか、ガブ(=DFガブリエウ)のケガをカバーしようとハーフタイムに出たので、それがチームとしての後半の勢いや内容に反映されたのかなと思う。よく(1点を)返せたな、と思います」と振り返った。チームは後半38分に同点に追いつき、アウェーから今季初の勝ち点1を持ち帰った。
得点に直結するミスは重い。もしかすると、一生夢に出てくるかもしれない。でも挽回しようとする姿こそ、プロフェッショナルの真価が問われる。和田のプレーは、まさにプロだった。だからこそチームも一丸となり、開幕連敗を阻止できたように感じる。
サポーターにお願いしたい。次節のホーム・鹿島戦。もし和田の名前が場内にコールされたら、その日一番の拍手で迎えて欲しい。和田はそれに値するプレーを見せた。「12番目の選手」のサポートが、チームを一段上へと引き上げるはずだ。
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