野球人口減少に伴う学童チームの分岐点 部活動の地域移行に協力体制を《後編》

打撃投手を務める野村さん。2月下旬の合同練習では3チームが集まり、ノック、打撃練習などを行った
打撃投手を務める野村さん。2月下旬の合同練習では3チームが集まり、ノック、打撃練習などを行った
ノックを打つ前に助言を送る野村さん。子どもたち自身が考える野球をポリシーとしている
ノックを打つ前に助言を送る野村さん。子どもたち自身が考える野球をポリシーとしている

 甲子園球場にほど近い兵庫・西宮市に中学生を対象とした軟式野球クラブ設立の動きが本格化している。「小・中学校の野球人口激減」と「部活動の地域移行」の流れをくみ、非営利法人「Nest Baseball Teams」の発足に動いているのが野村努さん(55)。自身の構想を関係者に伝え、元阪神、DeNAでNPB通算97勝を誇る久保康友氏(42)の協力も取りつけた。来年春の誕生を目指す小・中一体型軟式野球チーム「オール甲山クラブ(仮称)」の裏側に迫った。(後編、取材・表 洋介)

(前編から続く)

 野村さんは学童野球で合併チームを設立したノウハウを中学生にも生かそうとしている。「西宮市のスポーツ推進審議会の委員となったこともあり、西宮の甲山地域で部活の地域移行の流れをくんだ軟式野球チームを作りたいなと思うようになりました。先生方の働き方改革や、学校と地域が一体となって取り組める新しいスタイルの実現を目指し、様々な関係者と話し合うことから始めています」。思い描くのは昨年、発足させた学童野球の新しい姿を中学でも実現させることだ。

 昨年末からは地元の中学校、地域スポーツの関係者と協議を重ね、双方の事情なども意見交換した。年明けからは西宮の小学校区ごとに設立されれている「スポーツクラブ21」の代表者と話し合った際にヒントを得て、非営利法人「Nest Baseball Teams」を発足させることを決意した。

 「部活動の地域移行を今後、3年かけて行うというスポーツ庁からの方針は出ましたが、現場はまだどのように進めていけば良いのか分からない状態です。ただ、この流れは今後必然となることを想定し、課題を解決するための器を作ることを決めました」

 23年度からは同地区内の複数の中学野球部を中心に、指導者支援や合同練習を計画している。さらに地域の公立小・中・高の交流会など、コミュニケーションを図る活動を実施。「地域と学校の一体感を醸成させて、部活動の地域移行の方向性もかんがみながら、未来に向かって野球の魅力を感じてもらえるクラブを作りたい」。野村さんは中学軟式野球クラブチーム「甲山クラブ(仮称)」を設立する方向で動き始めた。

 兵庫県の中学体育連盟は23年度から主催大会に民間団体に所属する選手の参加を認める方向を打ち出しているが、会費や保険など、クリアすべき問題も多い。また野球部の指導者を志し、教員を目指した顧問の先生の活躍の場を奪うわけにもいかない。

 「大会の運営や会費についてはスポーツ庁を始め、国が負担してくれる方向に進んでくれることを願っています。部活顧問の先生と力を合わせ、将来に向けた野球界の発展を地域で取り組むことができるのであれば、こんなにうれしいことはありません」

 貴重な出会いもあった。阪神、DeNAで投手としてプレーした久保康友氏が野村さんの熱い思いに共感し、指導や運営に協力することを快諾してくれた。「自分も野球に育ててもらった身としては何か恩返ししたいと思っています。野村さんのような草の根からの活動を陰ながら支えていければと思っています」。自身も独立リーグや海外リーグで現役を続行しているが、週末などは少年野球の指導や送り迎えに励んでいる。新組織が設立された暁には協力を惜しまない考えだ。

 「阪神タイガースさんや社会人の大阪ガスなど、西宮は野球が根付いている地域です。この流れを断ち切らないためにも、子どもたちが思う存分、白球を追うことができる環境を整えていきたい。久保さんのような方もおられるし、プロ、アマを問わずに地域が一体となってコミュニケーションを深め、皆さんで野球界を盛り上げていけたらと思っています。私と一緒に新しい野球組織を創造して頂ける方も探しています」と野村さん。サラリーマンとの二足のわらじで野球の裾野拡大に尽力していく。

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