◆早大OB・赤堀正司さん(60)
箱根駅伝史に残る名シーンのひとつが1985年大会の「吹雪の6区」だ。
連覇を狙う早大は往路で2位の順大に4分22秒の大差をつけて圧勝。しかし、復路では不安があった。前年、6区5位と好走した越智房樹さんが1週間前に故障。代役を担ったのが最初で最後の出場となる4年生の赤堀さんだった。
箱根駅伝出場を目標に一般入試で入学したが、3年時までBチーム。「4年目に心を入れ替えた。あと1年しかない、と」。努力を重ね、大舞台に立った。
78年大会以来の雪中レース。「スタートして50メートルの左折で、いきなり滑った。最短距離を走りたかったけど、車のタイヤ痕以外は走れなかった。横断歩道は特に滑るので気をつけました」。1時間1分38秒で区間3位。2年連続区間賞の順大・羽柴卓也さんに21秒詰められただけで耐え、早大の11度目の優勝に貢献した。
7区の伊藤雅弘さんにタスキを託し、「やりきった。思い残すことはない」。あのときの心情は38年たっても覚えている。赤堀さんの情熱が箱根の雪を少なからず解かした。(竹内 達朗)
◆赤堀 正司(あかほり・しょうじ)1962年7月15日、愛知・岡崎市生まれ。60歳。中学時代は水泳部で全国大会に出場。岡崎城西高から陸上を始める。1年時に全国高校総体出場も2、3年時は東海大会で敗退。81年に早大教育学部に入学。85年に卒業し、旭化成に一般就職。現在は関連会社に勤務。