◆明治安田生命J1リーグ開幕節 広島0―0札幌(18日・Eスタ)
北海道コンサドーレ札幌はJ30年目の開幕戦に臨み、敵地で広島と0―0で引き分けた。昨季3位、ルヴァン杯王者に前後半計シュート13本を浴びる厳しい戦いも、GK菅野孝憲(38)が再三のビッグセーブ。札幌ではこの日初めて歌われた念願の個人チャント(応援歌)も力に“ノリノリタカノリ”で大きな勝ち点1を呼び込んだ。J1で初の開幕戦に臨んだ守備陣も奮闘。粘り強い戦いを次節(25日)のホーム開幕・神戸戦につなげる。
頼れる背番号1が広島の前に立ちはだかった。浴びたシュートは苦しい試合を象徴する13本。それでもゴールを許さなかった。2年連続、J1で3度目の広島との開幕戦でも初の勝ち点1で23年が開幕。菅野は「うまくいかない時間も長かったが各々がチームのためと踏ん張れた。無失点はキャンプ練習試合6戦を含め今季初。結果と共に前を向いていける試合」とうなずいた。
目覚めの一発は前半8分だ。右コーナーキック(CK)からのシュートを横っ跳びでセーブ。流れた体は、音を立て左ポストとぶつかった。「手と一緒に顔も。でもあれで起きたっていうか。うまくいかないキャンプも続いて開幕戦がターニングポイントになればいいなって。だからポストも怖がってなんていられない」
期限付き移籍の18年から札幌6年目の38歳。この日はコロナ禍も経て自身の熱意も届いた個人チャントが敵地で初めて響いた。「もう歌われなくなる年かな…なんて思ってた。めちゃテンションも上がった」。後押しも背に後半29分には再び右CKからのピンチを足でラインギリギリでかき出す“菅野の数ミリ”も披露。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(65)も「素晴らしいセーブを繰り返した」とたたえる、ノリノリの働きでチームを救った。
強い精神、肉体に今季も衰えなどない。昨オフはハワイで暮らす愛妻、子供から大きな力ももらった。昨夏に誕生した第3子の長男のオムツ替えも積極的に担当。「早々に首が据わった」とほほ笑む素質も父譲りの身体能力がなせる技だ。胸に刻む家族や仲間、サポーターへの感謝、「今日という日は二度と来ない」という言葉を、この日もピッチでの心技体で表現し続けた。
勝利はならなかったが、昨季終盤から戦線を離れるMF駒井善成(30)、深井一希(27)に、FW小柏剛(24)、MFルーカスフェルナンデス(28)も負傷欠場の一戦で、束になり勝ち点はもぎ取った。「引き分けの次が大事。勝利につなげること」と菅野。本拠で勝ち点3をつかみにいく。
(川上 大志)
札幌の“初物組”も敵地での勝ち点奪取に貢献した。札幌加入3年目、J1で初めての開幕メンバー入りを果たしたDF岡村大八(26)はリベロで先発フル出場し、外国籍選手を完封。「気温も低く、試合前の震えが寒さのせいなのか、武者震いなのかは分からない(笑い)。大きな仕事はさせなかったし、個人的には満足できる開幕戦になった」と振り返った。
今季J2東京Vから加入したパリ五輪代表候補のDF馬場晴也(21)も後半43分からJ1初出場。昨季まで所属した古巣戦に先発のMF浅野雄也(26)、後半開始から投入のMF小林祐希(30)と札幌初出場を飾り、「サポーターの前で初めてのJ1に出場できて、時間とかは関係なしにうれしかった。雰囲気もJ2とはまた違ったし、ここからいよいよ始まるなって。アウェーの勝ち点1を、全員でホームの勝ち点3に生かせるように」と前を向いた。